写真提供:共同通信社

「マネジメントの父」ピーター・ドラッカーがこの世を去って20年。今なお、多くの経営者やビジネスパーソンから支持される理由の一つに、社会や組織のマネジメントをテーマとして扱いながら、人としての成長を促す色あせないメッセージを残してきたことがある。自己実現や組織論、ビジネスマインドなど、彼の言葉から見えてくる「働くこと」の本質とは?

 本稿では、『ドラッカーに学ぶ仕事学』(佐藤等著/致知出版社)より内容の一部を抜粋・再編集。日本航空の再建を果たした稲盛和夫の経営手法と、ドラッカーのマネジメント論の共通点に迫る。

ドラッカーで読み解く稲盛和夫の経営学

ドラッカーに学ぶ仕事学』(致知出版社)

■ きわめて再現性の高い、ドラッカーの経営手法に学ぶ

 マネジメントが発明されたと後に言われるようになる書『現代の経営』が世に出た頃、一人の若者が鹿児島から京都に出てニューセラミックスの研究を始めました。

 入社後、新しいセラミックスの合成に日本で初めて成功するも、上司と衝突し、退社――稲盛和夫氏の若き日の姿です。

 27歳で京セラを、52歳で第二電電(現KDDI)を創業しました。両社は2022年時点でそれぞれ売上高1.8兆円、5.4兆円の巨大企業に成長。加えて、経営破綻に陥った日本航空の再建を依頼され、78歳で大役を引き受け、会長に就任、1年で1000億円を超す黒字を計上し、2年8カ月で再上場を果たしました。

 日本航空再建のために携えていったものは、稲盛氏の経営哲学「フィロソフィ」と経営管理システム「アメーバ経営」の2つだけ。

 どちらもドラッカーがいう「コンセプト」です。その独自のコンセプトは、実践で磨かれ原理原則にまで高められていきました。

 ドラッカーがパターンによってマネジメントすることができればと述べたように、2つのコンセプトは、業種を超えて機能するきわめて再現性の高い経営手法であることが証明されたのです。