ドラッカーは知覚の能力を高めるために、日本画(水墨画)を鑑賞したという。写真提供:共同通信社
「マネジメントの父」ピーター・ドラッカーがこの世を去って20年。今なお、多くの経営者やビジネスパーソンから支持される理由の一つに、社会や組織のマネジメントをテーマとして扱いながら、人としての成長を促す色あせないメッセージを残してきたことがある。自己実現や組織論、ビジネスマインドなど、彼の言葉から見えてくる「働くこと」の本質とは?
本稿では、『ドラッカーに学ぶ仕事学』(佐藤等著/致知出版社)より内容の一部を抜粋・再編集。情報を知識に変え、過去を未来に生かすことの重要性を説いたドラッカーが、日本画やシェイクスピアを好んだ理由を紹介する。
ドラッカーはいかに学び、仕事に活かしたか
『ドラッカーに学ぶ仕事学』(致知出版社)
■ 読書――優れた人物と出会い、人生の教訓を得る法
「暇な時には何をしているのですか」と問われ、晩年のドラッカーは答えています。
「暇な時なんていうものは存在しないのだよ。私の場合、仕事をしていなければたくさん本を読む」(『ドラッカー20世紀を生きて』)
ドラッカーの18〜40歳までの回顧録『人生を変えた七つの経験』を読めば、どうやって人生の教訓を得て、人生を切り拓く糧にしていったかを知ることができます(『プロフェッショナルの条件』に掲載)。これらの教訓の源泉は、人物と言葉との出会いに尽きるといってもよいでしょう。
たとえば18歳のドラッカーは、オペラ「ファルスタッフ」の鑑賞をとおして作曲家ヴェルディの生き方に触れています。また、紀元前5世紀ごろの彫刻家フェイディアスの言葉、「神々が見ている」に出会い感激し、完全は手にできるものではないが、誰も見ていなくても常に完全を目指す姿勢で生きるという一生の教訓を得ました(詳細は、『ドラッカーに学ぶ人間学』9話及び29話参照)。
ドラッカーは、本などから得た言葉を媒介に人物から学んだといえましょう。そのような形で学ぶ姿勢を「私淑」といいます。
碩学・安岡正篤先生は、「どうすれば人物を養えるか」について、二つの秘訣を挙げました。






