写真提供:共同通信社

 型破り、というか、正直ちょっと変…35期連続増収増益という圧倒的成長力を誇る総合ディスカウント店「ドン・キホーテ(ドンキ)」。流通・小売業を代表する一大カンパニーへと飛躍した原動力は、「顧客最優先主義」と「権限委譲」という独特の企業風土にあった――。本稿では『ドンキはみんなが好き勝手に働いたら2兆円企業になりました』(吉田直樹、森谷健史、宮永充晃著/日経BP)から内容の一部を抜粋・再編集。ドンキやパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)のキーパーソンの話を通じ、ユニークで大胆な経営やマーケティングの手法の本質に迫る。

 ドンキのアプリ内にあるレビュー・掲示板機能「マジボイス」。その前身「ダメ出しの殿堂」はどのようにして誕生したのか、執行役員の森谷健史氏と、博報堂のクリエイティブディレクター・宮永充晃氏の言葉からひもとく。

集まったのは、愛のあるダメ出し

 ドンキのお客さまは、内心ダメ出ししたくてウズウズしていたんじゃないでしょうか。ダメ出しの殿堂を始めた途端、月4000件、多いときは月5000件ものダメ出しが殺到しました。

 これだけダメ出しされたら、普通は商品開発に携わった社員たちはヘコみますよね。ところが、ダメ出しの殿堂に集まったコメントの雰囲気が、あまりキツくないんです。

 ネット上のダメ出しというと、ヘイトやディスり、アンチといったワードが思い浮かぶかもしれません。しかし、ダメ出しの殿堂に集まったコメントは、X(旧Twitter)に書き込まれるようなトゲのある言葉遣いではありませんでした。どちらかというと、愛のあるダメ出しが多かったんです。

 きっと、お客さまはドンキのことを「しょうがねえやつだな」と思っていたのでしょう。お客さまにとって、多分ドンキは「世話の焼ける後輩」「突っ込みたくなる、かわいい弟」のような存在なんじゃないでしょうか。

 書き込みのトーンを見たとき、僕は「これはうまくいくんじゃないかな」と直感しました。なぜなら「より良い商品を一緒に生み出そう」といった、建設的な場所になっていたからです。ホント、お客さまには感謝しかありません。