
型破り、というか、正直ちょっと変…35期連続増収増益という圧倒的成長力を誇る総合ディスカウント店「ドン・キホーテ(ドンキ)」。流通・小売業を代表する一大カンパニーへと飛躍した原動力は、「顧客最優先主義」と「権限委譲」という独特の企業風土にあった――。本稿では『ドンキはみんなが好き勝手に働いたら2兆円企業になりました』(吉田直樹、森谷健史、宮永充晃著/日経BP)から内容の一部を抜粋・再編集。ドンキやパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)のキーパーソンの話を通じ、ユニークで大胆な経営やマーケティングの手法の本質に迫る。
部署の垣根を越え、白熱した議論が交わされるドンキの「商品起案会議」。そこでは実際に何が話し合われているのか? ヒット商品創出の核心を探る。
商品化の大きな関門「What3カ条」

試行錯誤を重ねた末、2021年2月、「情熱価格」をリニューアルしました。その結果、「素煎りミックスナッツDX」や「業務用ウインナー 800g」「ライトツナフレーク かつお 10缶パック」といった大ヒット商品が、次々と生まれました。
情熱価格が、お客さまとドンキを結び付けるマグネットになり、「ドンキに来たらこれを買いたい」というお客さまがお見えになるようになったのです。
ドンキの情熱価格といっても、かつては知ってる人は知ってる、といった程度でした。それが、今やドンキの“アイコン”になりました。
こうしたヒット商品を生み出す源泉になっているのが、前回述べた「How3カ条」と、もう一つ「What3カ条」です。
What3カ条は商品自体の売りを明確化するためのもので、(1)しっかりターゲットを見定められているか、(2)顧客のメリットに還元されているか、(3)『世の中の当たり前』ではなく独自性があるか、という3つの項目から成ります。そして、そのセールスポイントを顧客に伝えるため、判断の指針となるのがHow3カ条という立て付けになっています。
それでは、What3カ条について詳しく説明しましょう。事例として取り上げるのは、情熱価格のヒット商品である「にんにく6倍ドン引きペペロンチーノ」です。