離職率が高いと、人手が足りず忙しくなります。新たに人を採用するものの、忙しいと育成が間に合わない。そうなると仕事の効率が落ち、さらに忙しくなります。そしてサービスレベルが下がり、お客様の満足度も下がり、結果的にお客様からの感謝を感じる機会も減少します。働く充実感も下がってしまいます。
さらに、離職率が高いことで採用コストがかさみ、トレーニングコストも莫大にかかります。そのため現状働いている人にお金がかけられなくなり、勤務環境や条件が悪くなる。そこからまた離職につながってしまいます。
しかし、離職が減れば、熟練した人が店舗にたくさんいるため、仕事の効率が上がります。人手が充足しているので余裕があり、サービスレベルも上がり、お客様の満足度も上がります。そして、お客様からたくさん感謝されることで働く充実感が上がるのです。採用コストやトレーニングコストも削減されるため、今働く人にお金をかけることができ、働きやすい環境が整っていきます。結果的に、さらに離職が減るという循環が生まれるのです。
トリドールが運営する店は手仕事が多いため、人が頻繁に辞めていくと技術が蓄積されず、サービスレベルが落ちてしまいます。結果として、感動体験という我々の一番の強みがなくなってしまうのです。しかし、人が長く働いてくれたら、技術も高まり、結果的に顧客満足度も高まります。これが何年も続けば、離職率が高い状態が続いた場合に比べ、大きな差が出てくるでしょう。
今、トリドールの離職率は高いと言わざるを得ません。外食業界の全体平均と変わらないくらいですが、もともと外食業界は他業界に比べて離職率が高いのです。
そんな中でも、例えばスターバックス コーヒー ジャパンの離職率は業界平均よりも低いと言われています。やはり、離職率は働く人のエンゲージメント(愛着、誇り、思い入れ)によるのではないでしょうか。働き方や条件も影響するとは思いますが、スターバックスで働く人達はきっと、スターバックスで働く自分が好きだと思えている。ここで働くのは格好良い、という感覚がある。ここが大事なのです。
トリドールが目指すのは「格好良い」ではないかもしれませんが、「ここで働いている自分が好き」と思えるような環境はつくれるのではないかと考えています。
<連載ラインアップ>
■第1回 「新規参入でもシェアを取れる」トリドールHD粟田社長が語る、外食産業市場のダイナミックな可能性とは?
■第2回 「製麺所の風情を手放したら丸亀製麺ではなくなる」トリドールHD粟田社長が語る“二律両立”の経営とは?
■第3回 省人化の時代に、なぜ丸亀製麺は“増人化”へ舵を切ったのか?トリドールHD粟田社長が語る「体験価値」
■第4回 トリドールHDが始めた「KANDO開拓コミッティ」とは?離職率が下がれば顧客満足度が高まるメカニズム(本稿)
■第5回 トリドールHD急成長の土台、従業員一人ひとりが持つ成長哲学「トリドール3項」とは?(12月10日公開)
■第6回 国内外で年間250店、トリドールHD粟田社長はなぜ新規出店の意思決定を人に任せるのか?(12月17日公開)
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