画像提供:トリドールホールディングス

 一軒の焼き鳥屋から始まり、「丸亀製麺」の大ヒットから東証プライム上場を果たしたトリドールホールディングス(HD)。今や国内外に約20の飲食ブランドを持つまでに成長したグローバルフードカンパニーは、なぜ次々と繁盛店を生み出せるのか。本連載では『「感動体験」で外食を変える 丸亀製麺を成功させたトリドールの挑戦』(粟田貴也著/宣伝会議)から、内容の一部を抜粋・再編集。「外食は最も身近なレジャー」をコンセプトに快進撃を続けるトリドールの戦略ストーリーと、成功の源泉とも言える独自の経営論について、創業社長・粟田貴也氏が自ら明かす。

 第5回は、トリドールHDが原点として掲げている「感動(KANDO)」を軸に、これまで成長フェーズに応じて定めてきた経営理念を振り返りながら、グローバル展開を進める現在の姿を紹介する。

企業の成長に合わせ、数年ごとに理念を刷新

「食の感動で、この星を満たせ。」

 これは2022年5月に制定したトリドールのスローガンです。「世界中」ではなく「この星」としたのは、国境を意識しないくらいの大きな視点で、過去の常識や価値観にとらわれずに食の感動を広げていきたいという思いからです。これから先、市場や時代が激しく変化しても、北極星のように我々が目指す先を示してくれる。そんな言葉がスローガンなのです。

 トリドールが初めて経営理念を掲げたのは、店舗数も従業員も急激に増えつつあった2000年代半ば。皆の向かう方向を統一する必要があると考え、会社としての考え方を明確化しました。

 トリドールの存在意義は「大衆性」「普遍性」「小商圏対応」。そこから、「ひとりでも多くのお客様に(=大衆性)いつまでも愛され続ける(=普遍性)地域一番店を創造していこう(=小商圏対応)。」という経営理念をつくりました。

 ターゲットを絞らないことを「ひとりでも多くのお客様」と表現し、トレンドを追いかけるのではなく普遍的な成長を目指すことを「いつまでも愛され続ける」としました。さらに我々が目指すべきは、いつでもお客様で賑わっている繁盛店です。その思いを「地域一番店を創造」と表現したのです。経営理念と言うと大仰ですが、創業以来私が常々言っていたことでもあります。