ROE=当期純利益÷自己資本

 なぜこのROEが株主にとって大切かと言うと、第3回の配当のところで説明したように、定期預金における元金と利息の関係が、株式投資における資本金と当期純利益の関係によく似てるからです。

 つまりROEは、株主が出資した資本金である自己資本が、1年間にどれくらいの利息にあたる当期純利益を生み出してるかということを計算しているのです。ROEとは、事業という金融商品の利率を表しているようなものなのです。

 さらに言えば、株主は出資している会社からの配当を期待しています。その配当は利益剰余金をベースに行われます。その利益剰余金とは毎年の当期純利益が積み上がったものです。

 つまり、配当の元になる利益剰余金、その元になる当期純利益が、自分が出資している資本金との関係でどのくらい稼ぎ出されているかを見ているのがROEです。なので、株主にとってはとても大切な数字なのです。

 最近ROICという評価項目が重要視されてきています。ROICの計算式は次のとおりです。

 ROIC=税引後営業利益÷(有利子負債+自己資本)

 近年、自己株式を取得してROEの数値を上げるといった、財務的な操作によって財務的価値を向上させるような例が増えてきています。自己株式を取得すればROEが上がるだけでなく、一般的には株価も上がります。自己株式を取得すると、市場に出回っている株式が少なくなりますから、経済学の需要と供給の論理から株価が上がるのです。

 しかしながら、最近の大きな流れは短期的な財務価値向上ではなく、長期的な企業価値向上です。このような流れのなかで登場してきたのがROICです。

 ROICの計算式からわかるように、例えば借金をしてそのお金で自己株式を取得したような場合、自己資本が減った分有利子負債が増えますから、基本的にROICの数値に大きな変化はないのです。

 ここでROICの分子が「税引後営業利益」になっていることに注目してください。ROEの分子は「当期純利益」でした。ここが「資本のコストに見合うだけの利益」という言葉のポイントなのです。

 ROEの数値目標を明確にしている会社はたくさんあります。ただ、ROEの数値をただ単に他社の数値と比較しても大きな意味はありません。

 ROEは自己資本に対する利益率ですが、この自己資本にはコストが掛かっています。前ページで説明した株主資本コストです。そして、この株主資本コストは企業毎に異なるのです。