企業を取り巻く環境が激しく変わる現代において、経営者は「社会課題への対応」や「新規事業の創造」など、前例がないようなさまざまな課題に向き合っていくことが求められる。そのような「変化の時代」にあって、意思決定のよりどころとすべき本質とは何だろうか。本連載では『成果をあげる経営陣は「ここ」がぶれない 今こそ必要なドラッカーの教え』(國貞克則著/朝日新聞出版)から、内容の一部を抜粋・再編集。「マネジメントの父」と呼ばれる経営学の大家・ドラッカーの教えを元に、刻々と変わり続ける時代において、会社役員がなすべき役割や、考え方の軸について論じる。
第6回では、経営陣が考えるべき、ドラッカーの「3つの問い」を紹介。組織の全員が共通の認識やビジョンを持つことが、経営にとっていかに大切かつ難しいかを考える。
未来への責任と事業に関する「3つの問い」
第5回では、財務諸表を通して主にスバル・アサヒ・IBMの大きな変化を見てきました。どの会社も経営陣がどこかで大きな意思決定をして、会社の未来を変えていったのです。
何度も繰り返しますが、企業には次の「3つの役割」があると言いました。
- 組織の目的と使命を果たす
- 生産性をあげる
- 社会的責任を果たす
ただ、この「3つの役割」に加えて、経営にはもう一つの重要な側面があるとして、ドラッカーは次のように言います。「マネジメントは、常に現在と未来、短期と長期を見ていかなければならない。組織の存続と健全さを犠牲にして、目先の利益を手にすることに価値はない。逆に、壮大な未来を手に入れようとして危機を招くことは、無責任である*73」
担当者は基本的に今日の仕事を担ってくれています。明日のことを考え、今日と明日のバランスをとっていくのはマネジメントの仕事です。 ドラッカーは自社の事業に関して次の3つ*74を問えと言います。
- 自社の事業は何か
- 自社の将来の事業は何か
- 何をこれからの事業にすべきだろうか
*73 『マネジメント 課題、責任、実践』P・F・ドラッカー著、上田惇生訳、(ダイヤモンド社)の第4章