資本主義社会における事業のプロセスと財務会計の全体像がわかれば、第2回で出てきた「資本のコストに見合うだけの利益」という言葉の意味や、最近頻繁に出てくるROICの意味も簡単にわかります。
まずは「資本のコスト」というところから話を始めたいと思います。資本には自己資本と他人資本がありました。そして、これらの資本にはそれぞれコストがかかっています。
まず、他人資本のコストとは何でしょうか。そうですね。簡単に言えば借入金の利息です。では、自己資本のコストは何でしょうか。借入金のコストが利息なら、資本金のコストは配当ということになるような気がします。
ただ、自己資本の資本コストを求める際によく用いられている方法は、資本資産価格モデル:CAPM(Capital Assets Pricing Model)という考え方を利用するものです。それは次の式で計算されます。
自己資本の資本コスト=リスクフリーレート+リスクプレミアム
リスクフリーレートとはリスクがゼロの投資機会に対する利回りで、一般的には長期国債の利回りが用いられます。リスクプレミアムは、個々の会社の状況に応じてリスクフリーレートに加算されるコストです。会社の株式を購入する人にとっては、長期国債より株式のほうがリスクが高いため、上乗せする値がこのリスクプレミアムです。
このリスクプレミアムの値は会社によって異なるのですが、細かな計算は専門家に任せ、みなさんは基本的な考え方だけ理解しておけばよいと思います。
この他人資本のコストを「負債コスト」、自己資本のコストを「株主資本コスト」と言い、その値は基本的には%で表されます。例えば、負債コストとは借入金の利率です。
自己資本と他人資本をどのような組み合わせで使っているかは会社によってさまざまですから、それぞれの会社の資本コストを求めるには、負債コストと株主資本コストを加重平均して求めます。これをWACC(Weighted Average Cost of Capital)と言います。日本語では「加重平均資本コスト」です。
株主から見た企業の収益性を評価するうえで、非常に大切な評価項目にROE(Return on Equity:自己資本利益率)があります。計算式は次のとおりです。