日本ガイシ(NGK)は2021年、「NGKグループビジョン Road to 2050」を策定。独自のセラミック技術でカーボンニュートラルとデジタル社会に貢献するため、5つの変革により事業構成を転換するとし、齊藤隆雄氏率いるデジタル変革推進部がDXを社内的に推進している。その中で取り組んだ「見える化」の中身とはどのようなものだろうか。

※本稿は、Japan Innovation Review主催の「第2回 データイノベーションフォーラム」における「特別講演:データを武器に新たな価値創出を/齊藤隆雄氏」(2024年6月に配信)をもとに制作しています。

1919年に創立以来、蓄積してきた実験データの存在

 日本ガイシは2050年の社会を想像し、取り組む社会課題を「カーボンニュートラル」と「デジタル社会」と設定。「独自のセラミック技術をコアに、従来困難とされるモノを実現する」「モノからコトへの展開により社会に実装」していくと掲げた。

 2021年に策定した「NGKグループビジョン Road to 2050」における5つの変革は「ESG経営」「収益力向上」「研究開発」「商品開花」「DX推進」である。その取り組みの代表例として、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)がある。

 マテリアルズ・インフォマティクスとは、機械学習やデータマイニングなどの情報科学の技術を用いて、材料開発の効率化を図る分野や技術のことである。

 日本ガイシには1919年の創立以来100年分ものセラミックスに関する実験データが蓄積されている。それらの情報をAIに学習させ、さらにその実験データを循環させる。MIを構築することで、これまで数年かかっていたリードタイムを10分の1に短縮できる。そして、最終的には革新的な材料を創出するのだという。

 以下では、齊藤氏の講演から一部抜粋、再構成して日本ガイシのデータ活用による「見える化」の取り組みを中心にお伝えする。