だからこそ、経営者が、社員を「うちの会社はこういう方向でやるんだ」と腹落ちさせるセンスメイキングがますます重要になっているんです。こうした変化を受けて、最近の日本では、いい意味で「宗教的」な会社が出てきていると思います。たとえば、アウトドア用品で知られているスノーピーク。

池上 ああ、しばらく前に社長の交代劇があった…。

入山 そうでしたね。ここはある意味「スノーピーク教」なんです。ここは従業員だけでなく、熱心なお客も自分たちを「スノーピーカー」って呼ぶんです。創業者を崇拝しているとかではなくて、みんなスノーピークの製品やコンセプトの圧倒的なファンなんです。

 結果的にみんなの方向性が揃っているから、面白い仕組みができて、新潟県三条市にある本社は観光地としても整備されている素敵なところで、ここをお客さんが訪ねることを「聖地巡礼」と呼んでいます(笑)。

池上 楽しんでやっている感じですね。

入山 はい。今後、こうした「企業の宗教化」が増えていくと思うんです。単なる金儲けではなくて、人の心を満たしてくれるような新しいビジネス、新しい組織がたくさん出てくるんじゃないか。

 仕事のAI化が進むことで、それまで忙しく働いていた人たちが「なんでこんな大変なことをやらなきゃいけないんだっけ」と思うようになり、さらに「なんで私は生きているのか」と考えるようになるでしょう。そうすると、これからは、経営者のビジョンや理念に惹かれる人たちが社員や顧客になる会社がますます、伸びていくだろうと私は考えています。

 これはある意味で宗教と同じなんですね。宗教を悪い意味で言っているわけではなく、これからのいい会社はより宗教化していくのは間違いないと思っているんです。