バグダディの本名は、実はまったく違います。「アブー・バクル」というのは、初代カリフで、ムハンマドの親友でもあり、義父(ムハンマドの3番目の妻の父親)にあたる人物の名前なんですね。「アル=バグダディ」は「バグダッド出身の」という意味です。

 だから、単なる偽名なんですけれども、「あっ、カリフが復活したんだ! ムハンマドの後継者なんだから彼に従えば間違いないんだ」と思い込んだ連中が殺到して、ISは急激に勢力を伸ばした。ISの支配地域は最大時にはイギリス本国と同じ程度にまで広がり、域内の人口は約900万人に達しました。これなんかはまさに腹落ちと言えるんじゃないでしょうか。

入山 まさにそうですね。ISもセンスメイキングで急拡大したのですね…。バグダディには、それだけの能力やカリスマ性があったんですか?

池上 彼はもともと、それほど知識は持っていなかったと言われているんです。それがイラクでアメリカ軍に捕まって収容所にいる間に、他の連中から影響を受けて、人脈も築いていった。出所するときにはガチガチの活動家に変貌していたんですね。

入山 結果的に、他人を腹落ちさせられる人物になっていたと。

池上 はい。ただし、「イスラム国」も「カリフ」も自称であり、イスラム世界で正統と認める動きはありませんでした。反ISで世界が協力することになり、ISは勢力を縮小し、カリフを名乗っていたバグダディも死亡したと見られています。

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