日本政府の政策「みどりの食料システム戦略」

 日本政府は、農政の基本指針を定める「食料・農業・農村政策基本法」を25年ぶりに2024年に改正した。

 そして、第3条に、「食料システムについては、食料の供給の各段階において環境に負荷を与える側面があることに鑑み、その負荷の低減が図られることにより、環境との調和が図られなければならない」と明記し、農林水産業が生態系を破壊する側に立っているとの立場を明確に示した。これは日本の農政の抜本的な転換を意味する。

 すでに農林水産省は、生態系破壊を抑制する方向性を打ち出しており、それが具体的になったのが2021年に策定された「みどりの食料システム戦略」だ。50年までに化学農薬の使用料を50%減、化学肥料の使用料を30%減にするとともに、有機農法の面積を日本の耕地面積全体の25%(100万ヘクタール)に拡大する政策目標を設定した。

 すなわち、有機農法の目標を25%としながらも、それ以外の75%の農地でも持続可能な農法への転換を促していくということだ。さらに海外から輸入する食品原材料についても、30年までに「持続可能に配慮した」調達の実現を目指すと規定している。農林水産省が海外の農林水産業のあり方にまで踏み込んだのは、過去にはなかった新しい動きだ。

 2022年には「みどりの食料システム法」が国会で成立しており、持続可能な農業に転換する農家に対する減税措置や補助金支給の制度もスタートしている。

 さらに23年12月までに、全47都道府県が、すべての市町村の同意を取り付けたうえで、みどりの食料システム法に関する基本計画を策定し、みどりの食料システム戦略で掲げた目標を達成する道を自主的に選択した。こうして、日本でも持続可能な農業に向けた産業革命が始まろうとしている。

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■第5回 雇用は700万人の純増、サーキュラーエコノミー化による業種・産業への影響とは?(10月8日公開)
■第6回 経済損失は年12兆円、大企業や行政は「2025年の崖」問題にどう対処すべきか?(10月15日公開)

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