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<連載ラインアップ>
第1回 注目技術「e-メタン」で脱炭素社会をどう創る? ガスエネルギー新聞編集長に聞く、都市ガス業界の最新動向

第2回 「一足飛びに排出ゼロ」はどこまで現実的か? ガスエネルギー新聞編集長に聞く、日本の電源構成の最適解
■第3回 温室効果はCO2の28倍、排出抑制すべきメタンガスが「エネルギー源」として注目される理由(本稿)
第4回 AI、RPAをサプライチェーンで大活用 東京ガス、大阪ガス、北海道ガスが進めるDX最新動向

第5回 700社超が「GXリーグ」に参加、都市ガス業界が「カーボン・クレジット市場」に感じた新しい価値とは?
第6回 南海トラフ、首都直下型にどう備えるか?ガスエネルギー新聞編集長に聞く、進化する都市ガス業界の巨大地震対策


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メタンガス発生抑制は地方自治体の大きな課題

――地球温暖化防止や省エネに関わるエネルギーとして、「メタンガス」が注目を集めていると聞きました。そもそもどんな性質を持つガスなのでしょうか。

【ガスエネルギー新聞】

都市ガス会社の今を報道する業界唯一の新聞。天然ガス、LNG、燃料電池などガス業界の技術や製品情報、企業ニュースの他、周辺業界や行政の動きなども幅広く報道する。2023年7月から新メディア「ガスエネWeb」を公開中。

大坪信剛氏(以下・敬称略) メタンガスは、天然ガスの主成分となっている可燃性の気体です。自然界にも存在しますが、一般には石炭、石油、天然ガスなどエネルギー採掘時の排出が主な発生源で、この他農業分野や廃棄物分野からの排出も多いです。
 
 日本の場合はエネルギー採掘が少ないので、農業分野がメタンガスの最大の発生源となっていて、環境省によれば、その割合は全体の81.9%に達します(※)。

※環境省『2022年度の温室効果ガス排出・吸収量』
https://www.env.go.jp/content/000215754.pdf

 メタンガスの排出が注目される大きな理由の一つは、温室効果が非常に高いことです。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書によれば、地球温暖化への影響度は同じ量のCO2(二酸化炭素)の28倍にもなると言います。その意味で、メタンガス排出を抑制することは温暖化防止のために非常に重要です。

――具体的に、どのような場所で排出されるのですか。

大坪 日本の場合、農業分野で最もメタンガス排出の割合が大きいのは、家畜関連です。家畜の排せつ物もありますが、有名なのは、牛のゲップですね。牛は何時間も反芻(はんすう)を繰り返しながら胃の中の微生物の力を借りて草を消化するのですが、その副産物としてメタンガスが発生します。農業関連団体や研究機関では、排出を抑えるために牛の胃の中の微生物やエサの研究に取り組んでいるそうです。

 それから水田も発生源です。稲を収穫した後に残る稲藁が田んぼの中で発酵し、その際にメタンガスが排出するのです。土壌が濡れているとメタンガスの発酵が進むので、できるだけ乾燥させることで発生を抑制するといった対策がすでに行われています。

――そのようなメタンガスを、ガス業界ではどのように捉えているのですか。

大坪 農業分野と並ぶ発生源となっているゴミ処理工程や下水処理工程からのメタンガスを、新たなエネルギーとして活用しようと挑戦するガス事業者が出てきています。

 私たちの生活の中で出される生ゴミ(食品残渣〈ざんさ〉など)や下水汚泥が、微生物の力によって発酵するとメタンガスを排出します。そのまま大気に放出されると、温暖化を助長してしまうのです。ゴミ処理・下水処理は地方自治体の管轄事業ですから、生ゴミや下水汚泥由来のメタン発生をどう抑えていくかは全国の自治体にとって大きな課題となっていました。
 
 これをエネルギーとして上手に活用できれば、温暖化防止に貢献できます。今まで無駄に排出されていたガスを利用するので社会全体の省エネルギー化にもつながります。日本下水道事業団によれば、メタン発酵を行っている下水処理場は全国に約280カ所あり、そのうちエネルギーとして積極的な利用に取り組んでいる処理場は約40カ所あるそうです。特にここ5年で10カ所ほど増えています。

 背景にあるのは、脱炭素の潮流です。日本の地方自治体の多くが「ゼロカーボンシティ」を宣言しているのですが、具体的にどう取り組んだらよいのかと悩んでいるのが実情です。地方で最も着手しやすかったのが太陽光発電設備の普及推進でしたが、次の潮流になりそうなのが、ガス事業者との協業によるメタンガスのエネルギー化というわけです。