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 カーボンニュートラルの実現が地球的な課題となっている中、ビジネスの世界でもグリーントランスフォーメーション(GX)への取り組みが広がっている。企業は環境対策をどのようにビジネスにつなげていけばいいのか。世界のエネルギー業界におけるトレンド、脱炭素に取り組む意義、企業が取るべき戦略などについて、エネルギーアナリストの大場紀章氏が、ビザスク主催のオンラインセミナー「次世代エネルギーがつくる未来グリーントランスフォーメーション 〜エネルギー資源の中長期展望からみる新たなビジネスチャンスとは〜」にて解説した。

曖昧になっている脱炭素の「意味」

大場 紀章/エネルギーアナリスト ポスト石油戦略研究所代表

京都大学理学研究科博士課程中退。テクノバ研究員、日本データサイエンス研究所主席研究員を経て、2015年に独立。経済産業省「GX小委員会」委員やちとせ研究所スペシャリストも務める。

 大場氏の現在の肩書は、「エネルギーアナリスト」「ポスト石油戦略研究所代表」だ。かつては自動車メーカー系、技術系シンクタンクであるテクノバでエネルギー関連の調査に従事した。

「こうした経歴が、私と他のエネルギー専門家との違いだと思っています。20年ほど前から、ガソリン自動車がどのようなタイミングで電気自動車(EV)へ移行していくかを研究していました。関連する技術や外交安全保障の変化も研究対象です」(大場氏)

 大場氏は自己紹介が終わると、セミナーの参加者に次のように質問した。

出所:ポスト石油戦略研究所「次世代エネルギーがつくる未来 グリーントランスフォーメーション」
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 参加者からの投票を締め切ると、「地球環境を守るため」=41%、「将来の人類のため」=40%と、この2つの回答がほぼ同数となった。他、「日本経済のため」=11%、「実は脱炭素すべきではない」=5%、「先進国日本の責任だから」=2%という答えが続いた。

 大場氏は以前にもほぼ同じアンケートをTwitter(現・X)でも行っており、その時は「実は脱炭素すべきではない」という答えが46%で最も多い結果になったという。

 なぜ大場氏は、こうした質問をするのか?

「今回の答えで多かった『地球環境を守るため』と『将来の人類のため』でもだいぶ意味が異なります。『脱炭素』といっても目的が曖昧になることもあれば、そもそも目的はさまざまあるという考え方もできるのが、質問した理由です。また『実は脱炭素をすべきではない』と心の中で思っている方も一定数いることを、認知する必要もあります」

 大場氏自身の、この質問への答えは「日本経済のため」とのことだった。そしてセミナーでは、世界的にどのような形で脱炭素が進められているかという視点を基に、日本企業ができること、すべきことが明かされた。