ヤマダホールディングス(以下ヤマダHD)傘下の住宅メーカー、ヤマダホームズが新商品「YAMADA スマートハウス」を発表した。「動く蓄電池」としての電気自動車(EV)や太陽光発電システム、EVの電気を家に送るV2H(Vehicle To Home)機器などがセットになった、「電力の自給自足」を実現する一戸建てだ。販売に際してはEV、最大50年の住宅ローン、保険、保証などセットで提供し、成約者にはヤマダデンキの家電家具ポイント100~300万円分を付与するという。異例の新築一戸建ての販売は、どのような戦略に基づいているのか。

じわり広がる「ヤマダ経済圏」

 YAMADA スマートハウスは、新築一戸建ての販売としては極めて特異なモデルとなっている。EVと太陽光設備、V2H機器を標準装備することで「創エネ・蓄エネ・省エネ」の生活を実現するほか、最大50年ローンを用意し、ヤマダデンキの高額ポイントも付与する。価格は3タイプ用意し、それぞれ2980万円(ベーシックモデル・29坪)、3480万円(スタンダードモデル・31坪)、3980万円(プレミアムモデル・32坪)。

 ヤマダHD代表取締役兼副社長執行役員COOの村澤圧司氏は「ヤマダスマートハウスは、HDが掲げる“暮らしまるごと”という戦略の集大成としての商品になる」と意気込む。

 ヤマダHDの主力事業は、家電量販店のヤマダデンキ。1973年に松下電器産業(当時)の系列店として「ヤマダ電化サービス」を創業して以来、家電量販店としてチェーン展開を本格化させてきた。

 ヤマダHDは近年、事業の多角化を進めている。人口減少が止まらない国内市場での家電販売は頭打ちとなっていると判断したからだ。2011年に住宅メーカーのエス・バイ・エルを買収し、2022年にはヒノキヤグループを完全子会社化。事業戦略を「暮らしまるごと」と掲げ、家電販売を基軸に、住宅や家具販売にも進出している。

 その取り組みは軌道に乗り、ヤマダホームズを中心とした住宅関連事業は好調だ。2023年3月期のヤマダHD決算では、主力の家電事業の売上高が前期比3.1%減だったのに対し、住宅関連は同1.8%伸長。さらに、ヤマダHDは近年金融事業や環境事業にも手を伸ばしており、住宅ローン販売や、太陽光パネルの廃棄といったリサイクルまでグループで完結できる仕組みを構築している。

 村澤氏は「過去10年間取り組んできた住宅販売は堅調に推移している。経済的な光熱費の使い方など、電気屋だからこそ提供できる住宅の価値をお客様に実感いただけているのではないか」と分析する。

ヤマダHD代表取締役兼副社長執行役員COOの村澤圧司氏

 YAMADA スマートハウスは、ヤマダHDがこれまで注力してきた住宅販売・金融業・リサイクル業のノウハウをワンストップに消費者に提供することで、競合の住宅メーカーには届けられない価値を訴求しようとしているのだ。