2012年にロジスティクス事業に参入した三井不動産。オフィス、商業施設からホテル、住宅、スマートシティまで幅広く開発・運営する総合デベロッパーとしてのリソースを生かし、「物流変革プラットフォーマー」として物流課題を解決する取り組みを進めている。今回はそんな同社の取り組みの中から、「EC自動化物流センター」における先端的な物流ソリューションの試みを紹介する。
庫内作業の大半を自動化した
2021年6月、JR京葉線の南船橋駅から10分ほど歩いた場所に「三井不動産ロジスティクスパーク(MFLP)船橋Ⅲ」が竣工した。地上8階建て、延べ床面積は約8万1200坪という広大な物流施設だ。
同パーク内に2022年11月、「EC自動化物流センター」が誕生した。倉庫作業の大半を自動化し、ECサイト「&mall(アンドモール)」における三井不動産運営倉庫からの出荷作業を担っている。&mallは、2017年11月に開設した三井ショッピングパーク公式通販サイトである。
EC自動化物流センターは、この半年間の自社利用で、1日当たりの最大出荷キャパシティが2倍以上に向上、庫内作業の人件費は約2割削減という効果を生んでいるという。
三井不動産は全国約60拠点の物流施設と、約120社のテナントを擁するが、その活動の中で見つけた課題をMFLPで生み出すソリューションと結び付け、解決しようとしている。今後は、EC自動化物流センターを他社と共同利用し、自社の自動化設備やノウハウを汎用化して他社へ提供することも想定しているという。
空間を徹底活用する3次元ピッキングシステム
2023年6月5日、EC自動化物流センターが報道陣に初公開された。同センターにおけるDXによる発送作業自動化の仕組みを紹介しよう。
ピッキングは人手による作業を前提にしていると、保管棚の高さが制限されてしまう。それでは、倉庫上部の空間が活用できないということで、このセンターではロボットが3次元を縦横無尽に移動するピッキングシステム「Skypod(スカイポッド)」(IHI物流産業システム/EXOTEC NIHON)を導入した。
これにより、ピッキング作業を自動化するとともに、出荷棚を上部へ拡張して出荷する商品を置くキャパシティを大幅に向上させた。
床面を自由走行するピッキングロボットは、そのまま保管棚を上り、荷物の入ったボックスを取り出したり、置いたりすることができる。出荷作業指示を受けて所定の棚に到着するまでは約2分。1台で1時間当たり約400便の自動搬送が可能だという。また、Skypodはデジタルツインにも対応しており、リモート監視が可能だ。
このロボットがピッキングステーションに到着すると、モニターにピッキング情報が表示され、作業者は指示通りに段ボール箱に商品を入れるだけで作業が完了する。