ニチレイロジグループでは労働力不足を補うため、デジタル化推進を目標に、2016年度より業務革新、物流DXに注力している。倉庫内作業のデジタル化に向けた、AI画像認識を用いたタブレット検品や、自動運転フォークリフトなどのロボティクスの活用、事務作業のデジタル化にはRPAやAI- OCRなどを活用してきたが、DX施策においては従業員の「自分ごと化」が極めて重要とし、意識醸成や人財育成にも注力してきた。その根底にはデジタルを推進するのはアナログな“人”であるという強い思いがあった。ニチレイロジグループ本社が掲げる「人が輝くDX」とはどのようなDXなのか。推進をけん引してきた業務統括部の勝亦充氏に聞いた。
トラックドライバー2024年問題を脅威ではなく、進化の機会と捉える
――ニチレイロジグループは、ニチレイグループの食品物流事業を主に担っているという印象でしたが、取引先の9割はニチレイグループ以外と聞き、驚きました。
勝亦充氏(以下敬称略) 実はニチレイグループの祖業は冷蔵倉庫業であり、冷凍食品加工事業は後発でした。
当社は1945年の創業以来、時代やお客さまのニーズの変化に合わせてさまざまな事業を生み出し、日本の食品物流におけるリーディングカンパニーとして変革を起こし続けてきました。
近年では、海外事業にも注力しており、冷蔵倉庫の設備能力においては、現在国内ではトップ、世界でも5位の規模となり、国内5000社を超えるお客さまとお取引があります。
こうした事業展開による物流サービスを持続的に提供していくため、積極的にデジタル化やDX推進に取り組んでいます。
――具体的にどのようなことがデジタル化やDX推進の課題になるのでしょうか。
勝亦 これは一例ですが、保管サービス提供の主体であるDC(保管型拠点)は冷凍であれば-25℃、冷蔵は7℃、そして有人のエリアと温度が違います。
DC内にAGF(自動運転フォークリフト)を導入するにあたり、冷凍と冷蔵の行き来で結露が発生し、機械が十分に動けなくなるなどの課題もありました。
メーカーと協力しながら、AGFの能力は概ね把握できるところまで進んでいますが、この温度差は低温物流で新しい試みに取り組む際に必ず突き当たる壁です。DC内での人とAGFの共存を目指すのか、あるいはDC内で階層ごとにエリアを区分するのかなど環境整備も含め、現在も試行錯誤を繰り返しています。
また、サービスの安定的な提供面からの課題とはなりますが、輸配送事業ではトラックドライバー2024年問題への対応が急務です。
当社では2024年問題への取り組みの一つとして、2022年から「SULS(サルス)」を展開しています。これは当社グループの拠点間輸送において荷台部分の切り離しができるトレーラーを活用し、全国に約80カ所あるDCと運送協力パートナーによる配送網とを組み合わせた次世代輸配送スキームです。
この効果としては、荷積み・荷下ろし等の作業を乗務員ではなく、当社の拠点で行うことでトータルの運行時間を大幅に短縮させるほか、あらかじめ倉庫側で荷積みした状態のトレーラーを用意しておくことで、車両到着後すぐに次の目的地への運行に移ることができるため、輸送能力の大幅な拡大につながります。
東名阪からスタートして運用検証を重ねている段階ですが、2024年問題を脅威に感じるのではなく、進化の機会として捉えていきたいと考えています。