不確実性が高い状況に対して「予測」ではなく「コントロール」によって対処する思考様式として注目を集めている「エフェクチュエーション」。これまでになかった価値を生み出すときに活用できる思考様式であり、起業家だけでなく、会社での日常的な仕事やプライベートでも使うことができるとされている。前編に続き、書籍『エフェクチュエーション 優れた起業家が実践する「5つの原則」』(ダイヤモンド社)を中村龍太氏との共著で上梓した神戸大学大学院経営学研究科准教授の吉田満梨氏に、5つの原則のポイントと実践方法について語ってもらった。
■【前編】共通していた思考様式、成功者が実践する「エフェクチュエーション」とは何か
■【後編】共通していた思考様式、成功者が実践する「エフェクチュエーション」とは何か(今回)
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パートナーシップを活用して「想定しない結果」を生み出す
──前編ではエフェクチュエーション「5つの原則」のうち、3つ目までを解説いただきました。4つ目の「クレイジーキルトの原則」はどのような考え方でしょうか。
吉田満梨氏(以下敬称略) 「クレイジーキルトの原則」は、パートナーシップに関連する思考様式です。熟達した起業家は、コミットメントを提供できそうなあらゆるステークホルダーと交渉してパートナーシップを模索していきます。
この原則の名前にある「クレイジーキルト」とは、色や柄、形がバラバラの布切れを縫い合わせて作る作品のことを指します。
クレイジーキルトの作家はさまざまな布切れの入ったカゴを持っており、それらを使って創作をします。大きな作品になると、複数のキルト作家がそれぞれの好みの布切れを用いて共同作業を行います。
最初は個々の作家が作りたいイメージを持って制作に臨むかもしれませんが、実際には誰かがつなぎ合わせたパターンから新たなイメージが想起され、共に議論しながら作品を作るのです。結果として、誰もが予想もしなかった素晴らしいデザインが完成することになります。
対して、これまでの経営学が重視してきた「コーゼーション(因果論)」におけるパートナーシップは、つくるべき絵が最初から決まっている「ジグソーパズル」にたとえられます。そのため、必要なピースを持っている人がパートナーになると予め想定されているのです。