2000年代に注目を集めた「アクティビスト」(物言う株主)の動きが再び活発化している。海外のアクティビストファンドの日本への参入が相次ぎ、2023年6月の株主総会では株主提案を受けた上場会社数が過去最多を記録した。いま、日本企業が狙われる理由は何なのか。買収の脅威に晒されることがないように、どのような備えをするべきなのか。書籍『敵対的買収とアクティビスト』の著者で、これまで数々のアクティビストと対峙してきた弁護士の太田洋氏に、アクティビストの全貌や標的になりやすい企業の特徴、アクティビストから自社を守るための方策について話を聞いた。(前編/全2回)
■【前編】株主提案が過去最多、アクティビストの活動はなぜ日本で活発になっているのか(今回)
■【後編】アクティビストの標的にならないために、上場企業が自問すべき「1つの問い」
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日本は「アクティビストが活動しやすい国」
――なぜ今、「敵対的買収」「アクティビスト」に関する本を書こうと思われたのでしょうか。
太田洋氏(以下敬称略) 昨今、アクティビストによる敵対的買収について、メディアで取り上げられる機会が増えています。その一方、今の株式市場で起きていることの本質を正しく伝えられていない、という問題意識を抱いていました。
「敵対的買収」「アクティビスト」という言葉自体は、2005年のニッポン放送事件*1の頃から一般的になり、18年が経過しています。ですから、こうしたテーマの書籍はたくさん出版されています。しかし、どれも現象面のみを追ったものか、あるいは極めて専門性が高い内容なので、専門外の人が手に取っても途中で読むことを断念してしまいます。
誰でもわかるような内容の書籍が出てくることを期待していたのですが、これがなかなか出てこない。「それでは自分で書くしかない」と思ったことが本書を書いた理由です。
多くの方は「日本では敵対的買収を行いづらい」「アクティビストにとって活動しづらい法制度になっている」というイメージをお持ちなのではないでしょうか。ところが、実際はその逆です。諸外国と比べても、日本は敵対的買収を行いやすい環境下にあります。Bloomberg調べでは、2023年の上半期、世界の中でも日本はアメリカに次いでアクティビストの活動が多い国であったとわかっています。
つまり、今後はますますアクティビストの活動が活発化すると予想されるため、企業の経営者にはさまざまな対策が求められます。これが本書を通じて伝えたい最大のメッセージです。
1. ライブドアがフジテレビの筆頭株主であったニッポン放送の株を買い占め、後に東京地裁で有罪判決を言い渡された事件。