ソニー創業者の盛田昭夫氏(1985年当時、写真:Fujifotos/アフロ)

 ソニーグループの業績が好調だ。売上高は3期連続で過去最高を記録、営業利益も1兆円の大台に乗せた。しかも利益率は10%台と、日本でエレクトロニクス製品を取り扱う企業としては極めて高い。それを可能にしたのが、エレキとエンターテインメントという2つの事業を並行して展開する両輪経営に成功したことだ。創業者の盛田昭夫氏は、1960年代からこの両輪経営を推し進めてきた。なぜ盛田氏は世界に例のない企業グループを目指し、実現させることができたのか。

<ラインナップ>
【前編】盛田昭夫はいかにして無名だったソニーを「世界のSONY」に成長させたのか
【後編】盛田昭夫が夢見たソニー流「エレキとエンタの両輪経営」はこうして実現した(今回)

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ソニーグループの最大の強みは「事業領域の多様性」

 ソニーグループは世界で唯一の会社である。それは決算書のセグメント情報を見ればすぐわかる。前3月決算の場合なら、次のように書かれている。

●ゲーム&ネットワークサービス/売上高3兆6446億円、営業利益2500億円
●音楽/売上高1兆3806億円、営業利益2631億円
●映画/売上高1兆3694億円、営業利益1193億円
●エンターテインメント・テクノロジー&サービス(ET&S)/売上高2兆4760億円、営業利益1795億円
●イメージング&センシング・ソリューション(I&SS)/売上高1兆4022億円、営業利益2122億円
●金融/売上高1兆4545億円、営業利益2239億円

 ET&Sはテレビや音響機器などソニーの祖業ともいうべき製品群で、I&SSはイメージセンサーなどの半導体部品が主たる製品だ。

 ソニーG全体の売上高は11兆5398億円だが、6つの事業領域で売り上げが1兆円を超え、それぞれ営業利益は1000億円超だ。この多様性がソニーGの最大の強みとなっている。そしてエレキ部門とゲームや音楽・映画部門のエンターテインメント部門を傘下に抱え、それぞれ収益を上げている会社は、世界広しといえどソニーG以外に存在しない。

 なぜソニーGのみがエレキとエンタを両立できたのか。そもそもなぜ音響機器からスタートしたソニーGがエンタに進出したのか──。その背景には、前回触れた、ソニーを世界的企業に育てた創業者・盛田昭夫氏の存在がある。

 ソニー製品を米国に販売するため、盛田氏は1963年に家族ともども米国に移住する。滞在1年半の間に多くの政財界人と面談を重ね、ソニーと自分自身を売り込んでいった。その結果、盛田氏は米国でもっとも知られる日本人経営者となった。

南アフリカの元大統領、フレデリック・ウィレム デクラーク氏と会談した盛田氏(1992年、写真:AP/アフロ)