東急不動産ホールディングスが中期経営計画2025で「環境経営」とともに掲げるキーワードが「DX」だ。同社グループが保有する「資産」と「人財」の価値をDXで最大化し、新たな収益モデルの確立を目指すという。その実現の鍵となるのが、DXを通じてグループのサービスを「つなぐ」ことだ。「つなげるDX」とはどのようなものか。そして、どのような未来を目指しているのか。2人のキーパーソンに話を聞いた。
DXで「自分らしく輝ける未来の実現」を目指す
──東急不動産ホールディングスがDXで目指すものは何でしょうか。
青木貴弘氏(以下敬称略) 目指しているのは「魅力あふれる多彩なライフスタイルの創造を通じて、誰もが自分らしく、いきいきと輝ける未来の実現」です。当社グループでは、これを「2030年のありたい姿」にしています。
私たちが目指す価値創造とは、「誰もが自分らしく、いきいきと輝ける未来の実現」に向けて「個人」「社会」「環境」がそれぞれの未来の理想像を描き、それらを実現することです。そのための4つの取り組みテーマとして「多彩なライフスタイルをつくる」「ウェルビーイングな街と暮らしをつくる」「サステナブルな環境をつくる」「デジタル時代の価値をつくる」を指針として活動しています。
そのときに活用するのがデジタルの力です。事業や組織の枠を超え、オンラインとオフラインの垣根も越えたいと考えています。お客さまの生活の過ごし方、住まい方、働き方を融合させたい。当社グループでは「Digital Fusion」と呼んでいますが、つながることが難しかった部分をデジタルの力でつなげることで、誰もが自分らしく、いきいきと輝ける未来を実現したいと考えています。
――その取り組みはどう進めていますか。
青木 「ビジネスプロセス」「CX(顧客体験価値)」「イノベーション」の3つの区分で推進しています。
まず私たちのビジネスプロセスをデジタルにより省力化し、自分たちの業務を創造的業務へ転換させます。その上で既存の知的資産を活用し、新たな価値創造、いわゆるイノベーションを目指します。
その際に重要になるのが、お客さまとの接点で、これが当社グループの大きな強みとなります。これを最大限に生かし、お客さまにとっての新しい感動体験を創出することで、顧客体験価値を高めていきたいと考えています。
――それを実現させる際のポイントはどこにあると考えていますか。
青木 「共創」が重要なポイントです。グループ各社が連携することでお客さまのニーズを精緻に理解できるので、体験価値を向上させやすくなります。グループ各社のナレッジやノウハウを積極的にシェアすれば効率的な事業推進も見込めます。
岸野麻衣子氏(以下敬称略) 「共創=一緒に」の精神をもとに、地域の自治体や組織と共に地方活性化にも取り組んでいます。
当社グループではホテルやスキー、ゴルフ事業をしていますが、スキー場中心にリゾート事業をを行う北海道のニセコ(倶知安町)で共創をさせていただきました。
ここでは、地元観光協会が主催する夏の観光を盛り上げる「スカイバス」というオープントップ(屋根のない)バスで、デジタルチケットシステムを導入しています。
デジタルチケットの使用により、省力化だけでなく、どのような人がどこで何を利用したかといったデータを把握でき、さらにニセコエリアで使えるクーポンを配布することで、ニセコの店舗や飲食店の訪問を増やすことができます。
街の回遊性を上げてより良い訪問体験へつなげる、データを元にした観光施策を共に検討する取り組みもしています。