戸建て住宅の販売・仲介を中心に事業展開するオープンハウスは、2013年の上場以来、11期連続で最高売上高を更新し続けている。さらなる成長に向けた施策として、複数の領域を横断するマーケティング体制を構築。成約確度をデータ活用によって予測するモデルも開発した。新たなマーケティング戦略の狙いと具体的な施策について、オープンハウスグループ マーケティング本部の川島佑太氏に話を聞いた。
領域ごとに担当が変わるマーケティング組織は企業の都合
──川島さんはマーケティング本部において、一気通貫のマーケティング体制の構築に取り組んできました。具体的にどのような取り組みでしょうか。
川島佑太氏(以下敬称略) 私が主に担当しているのは戸建て事業です。その中でも集客や広告、Webサイトなどの各担当と折衝しながら、マーケティングファネル(顧客が商品・サービスを「認知」してから「購入」するまでのプロセス)の分析を、一気通貫で行っています。
――どのような経緯で一気通貫のマーケティングに取り組む体制になったのでしょうか。
川島 私は入社当初に営業を経験した後、マーケティング本部へ異動し、システム開発やサイト運用、広告運用などに携わるなど、複数の部門を経験してきました。
他のメンバーはそれぞれの領域を専門的に扱うことが多い中、私のキャリアは珍しいケースだと言えます。それらの経験から学んだことも多く、戸建ての担当になったタイミングでマーケティングの改革の必要性を感じ、新たな体制作りに取り組み始めました。実際に動き始めたのは3年前からです。
当初は、マーケティングを一気通貫で取り組むことについて、それ自体は良いことだと知りりながらも、どう取り組めば良いか分からない状態でした。
ですが広告配信やWebサイトのお問い合わせ改善を経験した中で、コンバージョンの改善に寄与した施策を考えると、やはりお客さまに行き着きました。お客さまが何を求めているのか、実際に利用するときに使いづらくないかなど、お客さまの状況を先回りしておもてなしするような施策が効果的だったのです。
そういう視点でデータを改めて見返してみると、お客さまの流入経路によって施策への反応が違うことも分かってきました。お客さまが実際に目にしたものや体験したものによって、その後の行動が変わるということを実務で目の当たりにしたのです。
さらにお客さまのことを知ろうとすると、やはり領域ごとにぶつ切りになっている現状の組織体制は企業側の都合でしかなく、全体を大きく俯瞰できる一貫した顧客体験に基づく施策が重要だという結論に至りました。