住宅ローンの貸し出し・取次業務などを行うアルヒ(2024年1月から「SBIアルヒ」に社名変更予定)は、全期間固定金利住宅ローン「フラット35」の融資実行件数で13年連続トップの実績を誇るが、今後企業の目指す姿として“住み替えカンパニー”を掲げている。家を「探す」「買う」「暮らす」をワンストップでサポートする事業へのシフトを進めているのだが、そこにはどんな狙いや戦略があるのか。同社の勝屋敏彦社長に話を聞いた。
住み替えの促進が地球環境にも優しい理由
――アルヒでは住宅ローン企業から住み替えカンパニーへの転換を進めていますが、きっかけはどんな議論から始まったのでしょうか。
勝屋敏彦氏(以下敬称略) 起点となったのは、前社長(浜田宏氏)時代に打ち出した「住生活プロデュース企業」という方針です。
お客さまが住宅を購入されるのは人生の中でも特別な“ある日”であり、住宅ローンでファイナンス面からお手伝いするだけでなく、住まいを変える時の一連のサービスも提供していこうという考え方がスタートです。住宅ローンはそのプロデュースの 1 つの手段であって、最終的にはお客さまの住生活全体が良くなるようにしていきたいと考えています。
住宅ローン事業単体を考えてみますと、今後も人口や世帯数が減れば住まいを購入される方も減ると考えがちですが、実際にはお客さまが住み替えされると、それだけ住宅ローンを組む回数は増えてくるわけです。
30、40代で住宅を購入されて30~40年のローンを組む方が一般的だと思いますが、その間、家族構成は変化していきますよね。であれば、変化した時にライフステージに応じて住み替える方が増えていくことにもなります。
よく「終の棲家」と言いますが、住宅という有限な資源を1世帯で使い倒してしまうと、次の方が住む際は建て壊しでまた作らないといけない。日本はこれまでずっとそれを繰り返してきて、欧米の100年住宅のような社会的ストックの蓄積が少ないと感じます。欧米では住宅ストックが豊富ですので、1世代あたりの住関連費用の負担はすごく抑えられ、その分、他にお金を使うという好循環になっています。
結果として中古住宅の流通量も増え、CO2排出量の削減、ひいては脱炭素の社会に資することにもなります。ですから、住み替えを促進していくことはお客さまにとっても地球環境にとってもいいことなのです。
ただ、皆さん住み替えは面倒だと思いがちなので、転勤、子育てや介護、あるいは定年退職などのライフイベントがないと、なかなか住み替えの“ある日”はやってきません。そこで住み替えをもっと能動的なものにしていくために、街探しや家探しのお手伝い、個別のご相談、あるいは住み替え後の生活サポートまで提供していこうというのがアルヒのコンセプトになっています。