住宅ローンの貸し出し・取次業務などを行うアルヒ(2024年1月から「SBIアルヒ」に社名変更予定)は、全期間固定金利住宅ローン「フラット35」の融資実行件数で13年連続トップの実績を誇るが、今後企業の目指す姿として“住み替えカンパニー”を掲げている。家を「探す」「買う」「暮らす」をワンストップでサポートする事業へのシフトを進めているのだが、そこにはどんな狙いや戦略があるのか。同社の勝屋敏彦社長に話を聞いた。
- 大手総合スーパーの苦境を横目に滋賀県基盤の平和堂が店舗を次々大規模リニューアルする狙い
- 富士通・時田社長が力を込めて語る、矢継ぎ早に変革に取り組む“本当の意味”
- 目指すは「バッテリー一本足打法」からの脱却、TDK齋藤社長が語る“未財務資本”に根差した変革の道筋
- 「未知の魅力的なものを世の中に伝えたい」 J.フロント リテイリング最年少社長が描く“価値共創リテーラー”の真髄
- J.フロント リテイリングの歴代最年少社長、小野圭一氏が見てきた百貨店業界の浮き沈みと一大転機
- 湖池屋を再生させた凄腕マーケター、佐藤章社長が挑む「ポテトチップス革命」
- 店内で調理する「ふわふわ卵のカツ丼」が人気のセイコーマート 商品開発のモットーは「お客の声を聞かない」
- 道内シェアトップ、8年連続コンビニ顧客満足度1位…本州で寡占市場つくる競合に負けないセコマの独自戦略とは
- サントリー食品の小野真紀子社長が語る、新たに定めた企業DNAに「Seikatsusha」(生活者)の文字を入れ込んだ理由
- 女性リーダーの登用を進めるサントリー食品インターナショナル、小野真紀子社長が海外事業で学んだ「チーム力」
- 「先々のライバルは既存の銀行ではなくなる」auじぶん銀行・田中健二社長が見据えるネット専業銀行の勝ち残り戦略
- グループ売上高の3割に急成長、太陽HD・佐藤英志社長が振り返る「医療・医薬品事業」参入の裏側
- タニタが6年前に始めた社員のフリーランス化「日本活性化プロジェクト」の今
- 三井住友銀行・福留頭取が約16年の海外駐在で実感した「現場主義」の大切さ
- レンタルからリユース事業への転換で成長、ゲオホールディングス遠藤結蔵社長が語る「先見力」の源泉
- 「人づくりこそ最大のミッション」カルチュア・コンビニエンス・クラブ社長が描く“知的資本カンパニー”実現の秘策
- 新生Vポイント、旗艦店リニューアル…新プロジェクトを次々に仕掛けるカルチュア・コンビニエンス・クラブの狙い
- メーカー販売員を置かずに社員が対応、コスト増の店舗運営でもノジマが業績を伸ばせる理由
フォローしたコンテンツは、マイページから簡単に確認できるようになります。
住み替えの促進が地球環境にも優しい理由
――アルヒでは住宅ローン企業から住み替えカンパニーへの転換を進めていますが、きっかけはどんな議論から始まったのでしょうか。
勝屋敏彦氏(以下敬称略) 起点となったのは、前社長(浜田宏氏)時代に打ち出した「住生活プロデュース企業」という方針です。
お客さまが住宅を購入されるのは人生の中でも特別な“ある日”であり、住宅ローンでファイナンス面からお手伝いするだけでなく、住まいを変える時の一連のサービスも提供していこうという考え方がスタートです。住宅ローンはそのプロデュースの 1 つの手段であって、最終的にはお客さまの住生活全体が良くなるようにしていきたいと考えています。
住宅ローン事業単体を考えてみますと、今後も人口や世帯数が減れば住まいを購入される方も減ると考えがちですが、実際にはお客さまが住み替えされると、それだけ住宅ローンを組む回数は増えてくるわけです。
30、40代で住宅を購入されて30~40年のローンを組む方が一般的だと思いますが、その間、家族構成は変化していきますよね。であれば、変化した時にライフステージに応じて住み替える方が増えていくことにもなります。
よく「終の棲家」と言いますが、住宅という有限な資源を1世帯で使い倒してしまうと、次の方が住む際は建て壊しでまた作らないといけない。日本はこれまでずっとそれを繰り返してきて、欧米の100年住宅のような社会的ストックの蓄積が少ないと感じます。欧米では住宅ストックが豊富ですので、1世代あたりの住関連費用の負担はすごく抑えられ、その分、他にお金を使うという好循環になっています。
結果として中古住宅の流通量も増え、CO2排出量の削減、ひいては脱炭素の社会に資することにもなります。ですから、住み替えを促進していくことはお客さまにとっても地球環境にとってもいいことなのです。
ただ、皆さん住み替えは面倒だと思いがちなので、転勤、子育てや介護、あるいは定年退職などのライフイベントがないと、なかなか住み替えの“ある日”はやってきません。そこで住み替えをもっと能動的なものにしていくために、街探しや家探しのお手伝い、個別のご相談、あるいは住み替え後の生活サポートまで提供していこうというのがアルヒのコンセプトになっています。