DX後進国となった日本は、これからどのようにDXに取り組んでいけば良いのか。前編に続き、『デジタル・フロンティア 米中に日本企業が勝つための「東南アジア発・新しいDX戦略」』を著したIGPIシンガポールCEOの坂田幸樹氏に、東南アジアのDX事例を踏まえて、これからの日本の進むべき道を聞いた。「リージョン化」する時代において、日本が取り組むべき変革のアプローチとは?
IGPI坂田幸樹氏が登壇するLIVEウェビナーの配信が決定!
日本のDXは東南アジアから学べ!~IGPI坂田幸樹氏が語る「新時代のDX」
【LIVEウェビナー】10月2日(月)15時~16時配信(参加無料・事前登録制)
リージョン化の時代に求められるのは「地域特性に合わせた問題解決」
――前編では、日本が米中ではなく東南アジアのDX事例を参考にすべき理由として、意思決定のスタイルが似ている点を挙げられていました。東南アジアから学ぶべき理由は、他にもあるのでしょうか。
坂田幸樹氏(以下、敬称略) 東南アジアから学ぶべきもう一つの理由は、世界のトレンドが「国際化」から「グローバル化」、そして「リージョン化」へと進展していることにあります。
「国際化」とは、国境を維持した状態でモノの取引を行っていた時代を指します。日本製の自動車や黒物家電がよく売れた時代がそれに当たります。その後、インターネットや輸送の技術が発達したことで、物だけでなく、人やお金、情報なども「グローバル化」し、ボーダレスに取引されるようになりました。
そして、デジタル革命が一気に進んだことによって、グローバル化が発展する形で「リージョン化」が進展しつつあります。リージョン化とは、全世界共通のサービスではなく、その地域ごとの特性に合わせたサービスを提供し、問題解決を図るようになることを意味します。
例えば、世界中にいる華僑に向けた「華僑向けのサービス」や、イスラム圏内だけに届ける「イスラム金融の仕組み」といったイメージです。
――所属や特徴などで括られた一定のまとまりにサービスを提供するということですね。
坂田 その通りです。例えば、東南アジアには「グラブ」というスーパーアプリがあります。このアプリ1つでタクシーを呼んだり、スマホで決済をしたり、デリバリーを頼んだりできます。
「グラブ」は東南アジアのみでビジネスを展開していますが、東南アジア全ての都市でアプリが利用可能なわけではありません。クアラルンプールやジャカルタなど、人口密度が高い主要都市からサービスの展開を開始し、徐々にその範囲を広げています。そして、その都市の「行動特性が似ている人たちだけ」をターゲットにしているアプリなのです。
――特定のターゲットで括ることで、その層の人たちはどの国でも同じようなサービスを利用できるわけですね。
坂田 はい。ですからこのアプリは、違う国に移動するとインターフェースやサービス内容が変わります。タイでアプリを立ち上げればタイ語表記に変わり、インドネシアでアプリを立ち上げれば現地のバイクタクシーを呼べるようになる。国によって仕様は変わりますが、あくまでもアプリは同一のものなのです。私は、こういったところにも日本が学ぶべき点があると思っています。