日本のサイバーランキング

 ITU(International Telecommunication Union:国際電気通信連合)は2021年6月28日「GCI(グローバル・サイバーセキュリティ・インデクス)2020」を発表した。

 GCI(Global Cybersecurity Index)はICT(情報通信技術)を担当するITUの開発局が担当するデータに基づいて作られた最新のサイバーセキュリティのインデクスに関する報告書であり、我が国は韓国、シンガポール、マレーシアに次ぐ5位とランキングされ、世界では7位となっていた。

 その後、2022年に9位、2023年には10位とランキングを下げている。一方、エストニア政府やオープンソサエティ財団によるe-Governance AcademyのNational Cyber Security Indexでは、中央政府の体制などを評価した指数で、2020年には13位だったが、2023年には15位と評価を下げている。

 ITUのGCIの発表と同じ6月28日、英国に本部を置くIISS(International Institute for Strategic Studies:国際戦略研究所)は“Cyber Capabilities and National Power : A Net Assessment”として2年間の研究の成果を発表した。

 ここでは、サイバー能力と国力に特化して15カ国だけを評価した。最近数年に顕在化し、そして、活発化した国家間の戦略的競争がサイバー空間を用いた地経学的なアプローチという視点における米国、中国、ロシアの動きに着目し、サイバー空間のポリシーと政策的機能が国家安全保障の中心的な段階に移行したという観点から評価報告としてまとめられている。

 ちなみに本報告書ではインド、インドネシア、イラン、マレーシア、北朝鮮、ベトナムとともに、日本は対象15カ国の最下位のグループであるTier3として分類されている。

 日本がこれらの調査で低い評価をされている理由は大きく3つの点がある。

 1つは、インターネットや5Gの普及やそれらの性能といったデジタル社会の推進に比して、サイバーセキュリティに対する官民個人の体制が十分でない、というアンバランスさが指摘されている点。

 2つ目は、サイバーセキュリティに対する行政サイドの体制が十分統合的に、また、技術対応的に整備されていない点。

 そして、3つ目は、安全保障の観点でのサイバー攻撃やサイバー戦争に対する体制が十分でない点である。

<連載ラインアップ>
第1回 日本が経済安全保障戦略で「黒字国」から「赤字国」に転落した3つの構造的理由
第2回 経済社会秩序を守る「経済安全保障」政策の展開は、なぜ政府にとって困難を伴うのか?
第3回 「中国は戦略的競争の相手国」米国が対中強硬路線を鮮明にした経済安全保障上の理由とは?
■第4回 コロナ禍やウクライナ侵攻で浮き彫りとなった、サイバー空間における経済安全保障の課題とは?(本稿)
■第5回 国家安全保障の要と言えるエネルギー産業、日本の供給体制はなぜ脆弱なのか(10月21日公開)
■第6回 英国はなぜ国家間のコロナワクチン争奪戦に勝利し、世界初の接種を実現できたのか(10月28日公開)

※公開予定日は変更になる可能性がございます。この機会にフォロー機能をご利用ください。

<著者フォロー機能のご案内>
●無料会員に登録すれば、本記事の下部にある著者プロフィール欄から著者フォローできます。
●フォローした著者の記事は、マイページから簡単に確認できるようになります。
会員登録(無料)はこちらから