堀江:最後に、坪井様ご自身が経営層として、経営に多様性が入ることの意義をどう捉えていらっしゃるのかを教えてください。

坪井:経営には女性に限らずDEIが必要だと思っています。現在当社は中途採用も増やしていますが、そのような多様なメンバーから多様な意見が出ないと、企業は意思決定を間違ってしまいます。多様な人がいてこそ、企業は強くなる。ただ、男性役員の中に女性役員が1人というようなあまりにマイノリティな存在だと、発言しにくいのも事実です。これについては、経営層が取り組んでいく必要がありますね。

 多様性については、以前は、女性に対して「いてもいい」というような捉え方がなされていました。これは、男性がマジョリティで女性がマイノリティという捉え方だったから、女性は能力不足だけれども「いてもいい」だった。でも、今はそうではありません。多様な人材は「いた方がいい」のです。これからの企業は、専門性やジェンダー、国籍など、異なる強みや軸を持つ人が集まった経営チームでなければ存続できないのですから。

【解説】
 キリンホールディングスの取組みを、3つの視点7つのポイントで解説していきます。

 キリンホールディングス株式会社は、特に「①企業のビジョン・目標の明確化、③現場と経営を繋げる推進体制の構築、④管理職パイプラインを意識して、段階ごとに着実に継続して行う⑤マネジャー層のアンコンシャスバイアスの払拭⑦社内外コミュニケーションを強め、社員に浸透させる/外部環境の変化を捉え、対話を行う」の5点が素晴らしいと感じました。

 まず、CSV経営を打ち出し、3つの軸にダイバーシティを据えており、経営者自らが現場に赴き対話を行い、浸透させていることが基礎になっていると感じます。『なぜ多様性に取り組むべきか』を、理解し、社会の変遷に応じて、常に変わっていく姿勢の本気度が伝わります。またその体現として「なりキリンママ・パパ」を全社で展開し体感させるところまで行っているという点が正に、「①企業のビジョン・目標の明確化」と「⑦社内外コミュニケーションを強め、社員に浸透させる」であると感じます。

 また女性管理職パイプライン構築において、とても重要であるプール人材の構築も含めて進めていくことで、強固なパイプラインが創られています。昭和型の人事制度の場合、どうしてもライフイベントがある女性は育休ペナルティが起こり、昇格が遅れてしまう構造になっています。そこを解消するのは、昇格に関わる制度の変更と共に、早期に経験を積むことです。