ケイアンドカンパニー代表取締役社長 高岡浩三氏

 日本人として初めてネスレ日本の社長に就任し、右肩下がりだった同社の売り上げをV字回復させた高岡浩三氏。フィリップ・コトラー氏のお墨付きという、独自のマーケティング理論、そしてイノベーションを実現するための方法論とは──。高岡氏がイノベーションとマーケティングについて語った講演の骨子をお届けする。

※本稿は、Japan Innovation Review主催の「第3回CXフォーラム」における「特別講演:イノベーションを加速させるマーケティング思考/高岡浩三氏」(2024年5月に配信)をもとに制作しています。 

DX・BX・CXをマーケティングで捉える

 今、ビジネスの世界ではDX(デジタルトランスフォーメーション)、BX(ビジネストランスフォーメーション)、CX(カスタマーエクスペリエンス)というような言葉が花盛りです。私は、これらの「X」がつく言葉はマーケティングの一部として捉えることができ、各々が密接につながっていると考えています。

 ではマーケティングとは何か。その根本は、「顧客の問題解決(顧客が抱える問題を解決すること)によりもたらされる付加価値を創出するプロセスとその活動」だと私は説明しています。

 BtoBであれBtoCであれ、全てのビジネスは顧客が抱える問題を解決することによって成り立っていることを踏まえると、その顧客の問題を解決するソリューションを創ることこそ、マーケティングの本質だというわけです。だから、DXもBXもCXもマーケティングの一部ということになるのです。

 これは、私がネスレにいた時代に、誰が聞いても分かりやすい説明というものを考えた末に導き出したものです。この考え方をベースに、イノベーションとは何かをまず説明していきます。