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 働き方や価値観が多様化する現在、リーダーのあり方が問い直されている。そんな中、アップルやナイキ、アウディといったグローバル企業で導入されているのが「牧場研修」だ。世界のビジネスエリートは、なぜ自然に学ぶのか? そこで培われるリーダーシップやビジネススキルとは? 本連載は、各国の牧場研修に参加し、スタンフォード大学で斯界の世界的権威に学んだ小日向素子氏の著作『ナチュラル・リーダーシップの教科書』(小日向素子著/あさ出版)から、内容の一部を抜粋・再編集。

 第1回は、自然の中でリーダー育成を行う理由と「ナチュラルリーダーシップ」の定義を明らかにする。

<連載ラインアップ>
■第1回 馬の群れが教えてくれる、多様性時代のしなやかな「リーダーシップ」とは?(本稿)
第2回 女性リーダー比率30%超の資生堂は、なぜ「牧場研修」を導入したのか?
■第3回 50代経営者が猛省、牧場研修で気づかされた「指示出し」の問題点とは?(5月8日公開)
■第4回 なぜリーダーは「自分以外の存在を感じられる力」を身に付けるべきなのか?(5月15日公開)
■第5回 何をやっても無反応、馬を操れない研修参加者はどう窮地を乗り越えたか?(5月22日公開)

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自然が教えてくれる激動の時代に求められるリーダー像

 現在、多くの管理職の方々が、「リーダーとは何か?」「どのようなリーダーになればいいのか?」といった悩みを抱えています。

 急激に変化する時代の中で、この問いの重要性はさらに高まり、答えにたどり着く道のりは険しくなっています。皆さんも多かれ少なかれ、リーダーとしての在り方について、思うところがあるのではないでしょうか。

 この難問の答えは、「自然」にあると私は確信しています。リーダーになぜ、「自然」が関係するのか、と思った人もいるでしょう。気持ちはよくわかります。でも、いったんその疑問は横に置いて、読み進めてください。

 私は、10年ほど前から大自然に囲まれた北海道の牧場で、主にビジネスパーソンを対象に研修を提供しています。

 牧場を研修の場として活用しているのは、日常生活では得られない多くの「気づき」が、自然の中には潜んでいるからです。

 研修では、参加者を牧場の馬の群れの前に連れて行き、次のように尋ねます。

「どの馬が群れのリーダーか、直感で選んでください」

 すると、たいていの人が「大きい馬」を選びます。理由を聞くと、「 大 きくて強そうだから」と言います。

 次に人気なのが「黒い馬」です。理由は「色が黒いから」。 黒いとなぜリーダーなのか、根拠になっていない気もしますが、意外と多い答えです。

 ほかにも「集団の先頭に立っている馬」「1頭だけ離れている馬 」「ほかの馬を追い立てる動きをする馬」なども選ばれやすい傾向にあります。

 大きくて、黒くて、集団の先頭に立っていて、1頭だけ離れていて、ほかの馬を追い立てる――。

 これは、リーダーのイメージを、チームを先導する人、近づきがたい人、えらい人(えらそうな態度をとる人)などと捉えている人が多いことを示しています。

 既存の「優秀なリーダー像」「強いリーダー像」に縛られているのです。