第一生命保険(以下、第一生命)が、多様なチャネルを通じて顧客の体験価値を最大化する「CXデザイン戦略」に注力している。中でも代表的な施策がオウンドメディア「ミラシル」の立ち上げだ。日々の生活やライフスタイルに役立つ情報の発信によって、より多くの人に第一生命への親近感と信頼感を高めてもらう。第一生命が重視する体験価値とはどのようなものなのか。なぜ、保険会社が非保険領域のサービスも提供するのか。コミュニケーションデザイン部 ラインマネジャーの鎮目哲郎氏に話を聞いた。
商品・サービスの満足度を高めるために、顧客の体験価値を向上させる
──第一生命では中期経営計画「Re-connect 2023」で、顧客の体験価値を最大化する「CXデザイン戦略」を掲げています。なぜ、今、CXを重視するのでしょうか。
鎮目哲郎氏(以下敬省略) 私たちは、商品・サービスの価値は2つの要素によって決まると考えています。一つは商品やサービスそのものが生む価値、もう一つはお客さまが第一生命と接した際に感じる心理的な価値です。第一生命では後者をCX(カスタマー・エクスペリエンス)と定義しています。
保険は病気になるなど特定の条件の下で給付が行われるため、健康なときには商品の価値をなかなか実感できません。そのため、お客さまが不安や不満を感じることがないように、これまでは営業員が対面でコミュニケーションをとってニーズのヒアリングや病気、けがなどのリスク啓発を行ってきました。しかし昨今はこうした関係性の構築が難しく、対面での接点創出が難しくなっています。
そこで中期経営計画「Re-connect 2023」では、より多くの方と接点をもち、長期にわたる良好な関係性を築けるように、非保険領域を含めトータルでお客さまに寄り添う「CXデザイン戦略」を打ち出しました。お客さまのライフスタイルに寄り添うことで体験価値は高まります。これがCXを重視する理由です。
──非保険領域でもサービスを提供するとのことですが、具体的にはどういったサービスなのでしょうか。
鎮目 第一生命は「保障」「資産形成・承継」「健康・医療」「つながり・絆」の4分野に強みを持っていると考えています。この4分野でオンライン・オフライン問わずサービスやイベント、アプリなどを用意し、お客さまに役立つ情報を提供しています。お客さまは多様な方法の中から自分に最適なものを選択し、第一生命とのつながり方を自由に選ぶことができるようになります。
保険は未来や万が一の不安に備えるものなので、保険に加入しただけでは日常の悩みは解消できません。しかしお客さまは日常生活でもさまざまな悩みを抱えています。その悩みが解消できれば、お客さまは毎日をより安心して過ごせるようになります。このため、病気やけがなどの非日常時だけでなく、日常生活でも接点を持ってお客さまと良好な関係を築くというコミュニケーション方法を設計しました。