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「職場がゆるくて、成長実感がないから辞めます」。これまでの育て方が通用せず、会社を離れようとする若手社員に、上司はどう向き合えばいいのか?本連載は、リクルートワークス研究所の主任研究員が、独自調査を通じてZ世代の実像に迫り、効果的な育成ポイントを解説したなぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか』(古屋星斗著/日本経済新聞出版)から、内容の一部を抜粋・再編集。若手社員の定着・育成のヒントを探る。

 第1回は、若手社員の「囲い込み」が、会社に対する愛着などにどう影響するかについて、調査データをもとに解説する。

<連載ラインアップ>
■第1回 超大手企業の花形部門で働く20代社員が発した「離れ小島」の意味とは?(本稿)
第2回 総合電機メーカー入社3年目の若手が、副業先の地方企業で得た手ごたえとは?
第3回 調査で判明、育成上手のマネジャーになるための「黄金ルート」とは?
第4回 マネジャー歴10年、大手企業社員が気づいた、若手育成の重要なヒントとは?
第5回 若手に「小さな行動」を促すのが上手いマネジャーの「口癖」とは?


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「パフォーマンスが高い若手ほど退職する」問題への対応仮説

■若手育成に意味がないこと、意味があること

 この非常に厄介な問題にマネジャーや企業が向き合うためにどのような対応が有効だろうか。まず、パフォーマンスが高い若手に対する育て方の打ち手として、ここまでの内容から見えてきている事実をもとに、有効な対応の仮説を述べる。

①囲い込み策は無意味

 能力もあって意欲もある、そんな優秀な若者がいる場合、自分の手元に残して存分に活躍させたいと思うのは人情だ。

 部下の若手が他所でその力を尽くしているのを見ると、「そんなことしてないで、こっちでもっと力を出せよ」と思ってしまう経験は筆者にもあるし、その気持ちが本当に全くないというマネジャーはいないだろう。

 しかし、外の世界を見せないことは、本当に自分が働く会社への愛着や忠誠心、エンゲージメントを維持し、高めるのか。

 実際には真逆である可能性がある。20代の若手社会人2000人以上に対して行った調査結果からは、興味深い事実が浮かび上がっている。

 まず、社外の活動が自社への評価にどう作用するのかを調べてみよう。様々な「社外での活動経験の有無」と「会社に対する評価」の関係を整理するべく比較した。

 例えば「収入を伴う副業・兼業」を経験した若手(5・8ポイント)は、経験していない若手(5・4ポイント)より自社(現職企業)への評価が高い。無報酬の副業・兼業(プロボノ活動)、学び直し、ボランティア活動、社外勉強会の主催・参加といった社外活動の経験の有無で比べるとすべての活動で、「社外活動を経験している人の方が、会社への評価が高い」 という傾向が出ている。