「職場がゆるくて、成長実感がないから辞めます」。これまでの育て方が通用せず、会社を離れようとする若手社員に、上司はどう向き合えばいいのか?本連載は、リクルートワークス研究所の主任研究員が、独自調査を通じてZ世代の実像に迫り、効果的な育成ポイントを解説した『なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか』(古屋星斗著/日本経済新聞出版)から、内容の一部を抜粋・再編集。若手社員の定着・育成のヒントを探る。
第2回は、ハイパフォーマーの若手社員のキャリア不安を解消し、成長を実感させるヒントについて解説する。
<連載ラインアップ>
■第1回 超大手企業の花形部門で働く20代社員が発した「離れ小島」の意味とは?
■第2回 総合電機メーカー入社3年目の若手が、副業先の地方企業で得た手ごたえとは?(本稿)
■第3回 調査で判明、育成上手のマネジャーになるための「黄金ルート」とは?
■第4回 マネジャー歴10年、大手企業社員が気づいた、若手育成の重要なヒントとは?
■第5回 若手に「小さな行動」を促すのが上手いマネジャーの「口癖」とは?
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②短距離走にする
選択の回数の多い職業人生となり、若手も自分の選択のタイミングが、今後早期にやってくる予感を高めている。
特に、様々な経験をしてきたようなハイパフォーマンス層においてはその予感に起因するだろう、「キャリア不安」が顕著であった。
選択のタイミングが「課長に昇進できなかったとき」とか「親の介護が必要になったとき」だけではなく、20代のうちに来てしまう。第2章で見たように20代後半の社会人の退職経験率は51・5%と半数を超えているし、そのほかにも副業・兼業をするかしないか、リスキリングをするかしないかなど、多種多様な選択のタイミングが来る。
そう考えたときに、仕事がどこが目的地か見えない、ダラダラとしたジョギングであってはならない。
目に見えるところにゴールテープを張った短距離走でないと、ハイパフォーマーな若手の職業人生プランには組み込まれ難いのだ。
とある総合電機メーカーの入社3年目の若手が、地方の中小企業で副業を行っていた際の声が印象的だった。
「いまの仕事でも大きな新規プロジェクトのメンバーとしてアサインされていますが、1年半経ってもリリースすらされていません。でも副業先では3カ月で新たなサービスを開始でき、すでに自分の仕事の何がお客さんに刺さって何がイマイチだったのかわかってきてます」
彼女の職業人生にとっては、大手も中小もそれほど関係がない。職務経歴書に書ける経験という点では、どちらが彼女にとって“良い経験”“本気で取り組みたい経験”であったかは明白だろう。