基幹系システムの導入支援やアジアでの展開で存在感を発揮する日系ファームのアビームコンサルティング(以下、アビーム)。近年は、事業会社におけるサプライサイドの業務改革から、ビジネスにおけるデータの活用方法までを「エンド・トゥ・エンド」で支援することで存在感を増している。「クライアントに“依存”させるのではなく、“自走”を手助けするのが当社のミッションでありバリュー」と語る、執行役員プリンシパル戦略ビジネスユニット長の斎藤岳氏にアビームのDX支援の考え方と方法を聞いた。
「絵を描くだけ」「依存させる」のは本来のコンサルではない
──日本企業は2020年からDXに本腰を入れ始めました。アビームのコンサルティング案件の受注も増えたのではないですか?
斎藤岳氏(以下敬称略) はい。特に日本企業はキャッシュが潤沢ですから、投資家からのプレッシャーもあり、DXをはじめとした投資を行った上での「成長戦略」を描こうとしています。
ただ、その成長戦略が絵に描いた餅になってしまっては元も子もありません。綺麗な絵姿を描き、そのままお蔵入りしたり、またはコンサルのような外部サポートがないと動かない“依存”が前提となった計画では意味がないと考えます。実際、日本企業の経営層の方から、「本気で成長させようというのではなく、成長のための投資原資を狙っているだけなのではないかと感じるコンサルもいる」と苦言を呈されることもあります。
そんな中、日系の総合ファームとして当社が目指す支援のあり方は何か。それは「クライアントの自走」に他なりません。アビームはITシステムの統合や運用に関する専門性を有していることに加え、各業界を知り尽くしたコンサルタントが在籍しています。当然、クライアントから依頼されれば、その企業に本当に必要なDXを用意できるのですが、我々がいなくなった後に「どうすれば(デジタルツールを)使えるんだっけ」という状態になってしまっては勿体無い。
経営へのインパクトを考えた上でプロジェクトをすすめ、実働部隊は将来クライアントが自立できるようにシステムを整えていくことができるのがアビームの強みです。
例えば、「データ統合」はバズワードになっている感がありますが、複雑極まる日系企業の各事業のデータは、簡単に全社的に集約できるような代物ではありません。アビームであれば、各企業の事情に合わせて、最短かつ地道にデータ統合をすすめることができます。
下の図を見てください。各企業では、組織や法人、地域を横断したデータを活用しようという試みがされています。連結での事業別のROIC(Return On Invested Capital:投下資本利益率)であったり、地域や拠点横断でのサプライチェーン高度化であったりです。
よくある失敗例として、「3階」のどんなデータ分析をするかばかりに目がいき、あるいは「1階」であるシステムを変えデータ統合すれば良いという提言にとどまり、その後プロジェクトが進まなくなるということがあります。われわれは土台となる「1階」のIT資産を活用しつつ、「2階」であるデータ統合を建てた上で、「3階」を建てていきます。3階建てのアプローチとする理由は、1階である既存のIT資産のデータを強引に統合しようとすると、オペレーション上に無理が出たり、大きなコストがかかってしまったりするからです。また、構築時だけでなく、継続的にデータを統合していくマネジメントプロセスを導入することも大事な点です。
現場の事情に精通しながら、鳥瞰的な視点で全体最適を算出できる点がアビームならではのストロングポイントです。