ファミリーレストランの「ロイヤルホスト」や天丼チェーン「てんや」などを展開するロイヤルホールディングスは、3年間に及んだコロナ禍から何を学び、アフターコロナの今、グループをどう再成長させようとしているのか──。外食業界で有数の論客として知られる同社の菊地唯夫会長に、事業再生の道筋について聞いた。
<ラインナップ>
【前編】コロナ禍で直面した3つの課題、進化して乗り越えるロイヤルホールディングス(今回)
【後編】24時間営業廃止、休業日拡大を図るロイヤルホスト「規模の戦略的圧縮」の狙い
「リスク耐性が強いグループだと思っていたが…」
――コロナ禍で外食産業は大きな打撃を受けましたが、そこから得た学びや教訓について聞かせてください。
菊地唯夫氏(以下敬称略) 我々は「ロイヤルホスト」や「てんや」などの外食事業、企業内や大規模施設などでの食事提供を請け負うコントラクト事業、「リッチモンドホテル」などのホテル事業、当社グループの食品製造を行う食品事業、それに機内食事業と、5つの多様なビジネスを組み合わせるポートフォリオで経営してきました。
もともとそれぞれの事業には好不調の波があって、外食でプレミアム路線、あるいは逆に低価格ブームがあったり、コントラクト事業もガソリン高騰による出控えから高速道路のサービスエリアの集客が落ちる一方、インバウンドが増えて空港内の商業施設が賑わったりしました。こうした波を5つの事業を持つことでリスク分散する戦略で、リスク耐性が強いグループだという自負があったのです。
ところが、コロナ禍によって5つの事業すべてが大打撃を被りました。小さな波には耐えられても大波には持ちこたえられない、というのが我々が直面した現実です。
では、ポートフォリオ経営自体が間違っていたかといえば、決してそうではないと思います。現在はコロナ禍が収束して業績も急回復中ですが、原材料費や光熱費などの高騰に人手不足も相まって、もろもろのコストがものすごい勢いで上がっています。
その中で我々はもし外食事業しか展開していなかったとしたら、値上げとコスト削減を同時並行で進めなければならず、コロナ禍とはまた別の意味で厳しい状況になっていたでしょう。しかしながら円安トレンドが続いていることでインバウンドが急回復し、空港内施設やホテルが円安メリットを享受できています。そうした収益を確保できるのは、ポートフォリオ経営をしてきたからこそなのです。