株式会社Globridge(本社/東京都港区、代表/大塚誠、以下グロブリッジ)は、コロナ禍前に直営75店舗の飲食店を営んでいた。このほか、Web上で集客を行う「オリジナルネット集客ノウハウ」を開発し、自社で活用するとともに他社の集客支援を行うなど先端的なビジネスを切り開いてきた。だが、コロナ禍でこれらの方向性を抜本的に転換してゴーストレストラン事業を主軸とした会社となった。そして、短期間で独自のノウハウを築き上げた。
開始2年近くで約1600店舗を展開
この経緯について、グロブリッジ代表の大塚氏はこう語る。
「2020年の3月にコロナ禍となり、これは長く続くという感覚があったことから撤退を決断した。当社の店はほとんどが空中階にあり、ネット予約がメインで集客をしていたので、店を開けていてもフリーの集客は皆無。店舗は50店舗撤退し25店舗に減らした。従業員も180人在籍していたが50人となり、本社も移転した」
そして、残った店舗で、2019年12月に立ち上げたばかりの鶏肉のから揚げのデリバリー『東京唐揚げ専門店 あげたて』(以下、あげたて)を始めた。
同時に、もう一つ、会社として行っていたネット集客支援も、その支援先の飲食店でお客の数が激減したことから、「デリバリーができないか」「基本的に店舗の設備を使って」と考えていった。
そこで、考え出した仕組みが、これだ。
・同社が加盟店と商品の製造委託契約を結ぶ。
・同社が一般ユーザーから注文を受けて、加盟店に決められたレシピでの製造委託を行い、それをデリバリー業者がデリバリーを行う。
・費用は、売り上げの中から同社が加盟店には製造委託費、デリバリー業者には配送料を支払う。
つまり、成功報酬の事業モデルである。加盟店にとっては新規投資が不要で、初期費用もゼロ。メニューのレシピはリアル店舗のイートインのメニューにも使ってもらう。
この仕組みが一気に広がり、開始から1年半で7ブランド、ゴーストレストランの数は2021年末の段階で約1600店舗となった。
アンケートでお客の真の属性を捉える
大塚氏によると「『あげたて』を本格展開するようになった2020年3月ごろから2021年末に至るまでに飲食業のデリバリーの環境が4段階で変化してきた」という。
「第一のステージ」は飲食事業者も一般ユーザーもデリバリーに対するリテラシーが低かった時期。「ウーバーってなに?」という状態で、アプリの競争もなかった。しかしながら、飲食業のリアル店舗では営業ができないことから、売り上げをつくるためにみな「デリバリー」を語るようになった。
大塚氏自身も一般ユーザーとしてデリバリーを利用していた。そこで経験したことは大体、10のうち9がひどい状態になって届くということ。しかしながら、飲食店が営業していないことから一般ユーザーにとって外食をしようとした場合、デリバリー以外の選択肢が存在しない。当時のデリバリーは頼んでみたところで粗悪なところが多く、予想外にクオリティの良いデリバリーに当たるとそこに繰り返し頼むようになっていく。
「第二のステージ」となって、デリバリーを手掛けている飲食業者は「から揚げは最も手掛けやすい商品」という認識を抱くようになった。テイクアウトの店が増えてデリバリーをするところもたくさん出てきていた。同社の「あげたて」も毎週のようにテレビで紹介されて加盟店が増加。当時は売れる店で月商400万円、たいていが200万円を売っていた。
しかし、競合が著しくなって一気に売り上げが低下。単純に「から揚げのデリバリー」では勝てなくなった。
そこで同社では「STP」、つまりセグメント、ターゲティング、ポジショニングを明確にした。この推進には「あげたて」のデリバリーを利用しているお客の実態を知る必要があると判断し、同社では「こえなび」という仕組みを活用している。
「こえなび」は株式会社こえなび(本社/東京都港区、代表/福田雄)のサービスで、イートイン店舗の運営改善を目的として開発・運用されたていた利用客のアンケートである。グロブリッジではデリバリーの商品の中にこの仕組みのQRコードを同封して回答してももらい、顧客層の真の属性と改善するべきポイントを把握するようにした。
イートインにいるお客は観察ができるので、料理やサービスに対して不満足の場合の改善点が見えてくる。しかし、デリバリーではそれができない。「あげたて」ではサービスを開始した当初、主な客層を男性と想定していたが、「こえなび」のアンケート結果では20~30代の女性客が半数以上を占めていた。そこで、サイズアップしたボリュームを元のボリュームに戻し、から揚げにたっぷりソースを掛けて提供する形をやめて、色分けしたデップソースを幾つか添える形に変えたり、女性人気ユーチューバーに「あげたて」の魅力を発信してもらうようになった。