ファサードには大きく緻密な羊の顔や、2階席をのぞき込む羊の人形

 JR神田駅そばにある「ラム肉酒場 ラムゴロー」(以下、ラムゴロー)。駅の南口を日本橋側に出てすぐの交差点から東京駅方面を望むと、大きな黄色い矢印が店を指している。ファサードには壁一面に羊の顔が緻密な線画で描かれており、その斜め上には2階席をのぞき込む羊の人形と、カオスな店頭が楽しい。

 ラムゴローは4階建てのビルの1、2階。1フロア10坪で、2フロア合わせて50席を配している。1階は中央に炭火の焼き場が置かれ、それを取り囲む形で円型のカウンター席、その周りをテーブル席が囲む。炭火の焼き台がステージでそれを取り囲むように客席があるといったイメージだ。

1階は焼き場をステージに見立てて客席が囲む

 2階に上ると、外から2階席をのぞき込む羊の顔が出迎える。このフロアはテーブル席のみだが、ベンチシートの背中が当たる部分には、もふもふシート。「ここに座ってみたい」という感情が湧いてくる。

 このラムゴローは株式会社スマイルリンクル(本社/東京都千代田区、代表/須藤剛)の最新店。そして、同店はコロナ禍における同社の大きなプロジェクトとして展開された。

2階に上ると羊の顔が出迎える
ベンチシートの壁側にもふもふのシートを掛けて「座ってみたい席」にした

コロナ禍の中で決めた「神田が得意な会社に徹していく」

 スマイルリンクルは、創業者で現会長の森口康志氏が1994年に創業し27年の社歴を持つ。神田でドミナント展開をしていて、その中の一つ「広島お好み焼き Big-Pig 神田カープ本店」は広島東洋カープのOBや現役選手がトークショーを行うなど、カープファンの聖地となっている。現社長の須藤剛氏は2019年10月に代表取締役に就任。翌年、コロナ禍となり、大きな苦難の中でかじを取るようになった。

 神田は小さな事業所が密集するオフィス街だ。通常時のディナー帯はこれらのお客でにぎわうが、リモート勤務で昼間人口は半分以下に。展開エリアを他に移すことも検討したが、そうした中、昨年4月にJR神田駅南口から徒歩30秒のところに「10坪4階建て」の物件が現れた。須藤氏はこの物件を借りたいと思ったが、その決断に踏み切ることができなかった。

 同社は、創業以来、神田に拠点を置きながら、赤坂、銀座、行徳・葛西といった東西線沿線と多様なエリアで店舗を展開、累計で30店舗を出店してきた。それが、昨年の段階で神田に4店舗を経営する会社となっていた。

 須藤氏はこう語る。

「かつて展開エリアが広くなったことで“従業員の血が薄くなった”という感覚があった。従業員満足度が低下し、その結果、顧客満足度も低下した。そこで収益モデルが崩れていなかった神田エリアの店舗の営業に集中することになった。当社は神田で商売をするのが得意な会社になったという結論に至った」

 そして昨年6月、先ほどの物件を借りる決断をしたのであった。