2021年後半の飲食業界では「ピーター・ルーガー」の話題で持ち切りだった。
「ピーター・ルーガー」とは「熟成肉のステーキ」を世界に広めた存在で『ミシュラン』『ザガット・サーベイ』などの格付け本でランキング上位の常連。米国ニューヨークで2店舗を運営している。
同店はドイツからの移民のピーター・ルーガー氏が1887年にニューヨークでレストランを開業したのがルーツ。その後、経営不振で店がオークションに出され、そこで落札した人物のファミリーによって経営が継承、同時に「ピーター・ルーガー」の最大の特徴である「熟成肉ステーキ」のクオリティを高度に維持するエイジングのノウハウが育まれていった。
その「ピーター・ルーガー」海外初の店舗が2021年10月14日に東京・恵比寿にオープンしたことで大きな話題となったのだ。
ニューヨークの名店の伝統を東京で再現する
日本で「ピーター・ルーガー」を経営するのは株式会社ワンダーテーブル(本社/東京都渋谷区、代表取締役社長/秋元己智雄)。同社ではクラフトビールを提供するレストランやしゃぶしゃぶ・すき焼きなどの自社開発ブランド店を展開する一方で、「ロウリーズ・ザ・プライムリブ」「バルバッコア」「オービカ モッツァレラバー」といった海外の名店を日本に根付かせている。
その同社が2015年よりピーターファミリーと知己を得て交流を重ねてきたところ、「日本でピーター・ルーガーをワンダーテーブルと一緒に展開したい」という意向を示すようになり、2018年に同社がピーター・ルーガーの日本における独占契約を締結することとなった。
「ピーター・ルーガー」東京店(以下、東京店)は恵比寿ガーデンヒルズに隣接したエリアにあり、以前はステーキハウスが運営していた物件を改造した敷地面積約406坪、延床面積約489坪、全204席の店舗となっている。
看板商品の「Tボーンステーキ」は骨付き肉の骨が「T」の形をしていることからこのように名付けられ、フィレとニューヨークストリップ(サーロイン)を同時に味わうことができる。米国農務省によって格付けされた最上級プライムビーフを使用し、東京店でもオーナーが選任した目利き職人が吟味して買い付けをしている。
そうした肉をチルドで空輸して「東京店」の店内にある専用の熟成庫に入れ、独自のエイジング方法で28日以上熟成。肉は周りをカットして塩を振り、専用のブロイラーで表面を焼いて旨味を閉じ込める。肉を適度な大きさにカットして、溶かしたバターと共に皿にのせて、再びブロイラーに入れて数分間焼成した後、お客のテーブルに運ばれる。
このようにたくさんの工程を経て提供されるステーキは、かめばかむほどうまみが出てくるピーター・ルーガーならではの味わいとなる。
社長の秋元氏は「ピーター・ルーガーの総プロジェクト費用は約10億円となったが、これから年商15億円を目指し、10年、20年、30年と継続する店に育てていく」と語る。同店はまさに「街の資産」となる存在感がある飲食店といえるのだ。