2019年12月発行の著書『文系AI人材になる』(東洋経済新報社)で、これからはエンジニアをはじめとした「AIを作る人材」だけでなく、ビジネスの現場を知りAIを活用する人材が重要になると説いたのが野口竜司氏だ。野口氏が訴えた「AIを使うスキルが誰にも必要になる」という状況は、ChatGPTの出現によってまさに現実となりつつある。では企業は、AIを活用する人材をどのように育てれば良いのか。現在は東大松尾研発のAI企業、ELYZA(イライザ)の取締役を務め、大企業のAIアドバイザーや人材育成にも関わる野口氏に話を聞いた。
学ぶべき7つのスキル、過去のAIを忘れることも重要
――ChatGPTの登場をきっかけに、AIをビジネスに導入する動きが加速しています。今後どのような企業や業務でAIが活用されていくと思いますか。
注目のビジネスパーソン:サム・アルトマン(OpenAI CEO)
好きな書籍:『イシューからはじめよ――知的生産の「シンプルな本質」』(安宅和人著)
野口竜司(以下敬称略) ほぼすべての企業、業務に取り入れられると考えています。特に大きな変化が起きるのは、資格取得が必要な業務や、プログラマーなどの高度な知識を扱う職業です。ここはAIを深く活用する必要が出てくると考えられ、業務におけるAI依存度は高くなるでしょう。
AIを取り入れない企業は、これから何らかの遅れが出てくるかもしれません。ただ今回は、ほとんどの企業がこの技術を使わないといけないというマインドになっていると感じています。
――そこで企業はAI人材を育てる動きになると思うのですが、そもそもAI人材が持つべきスキルとは何なのでしょうか。
野口 AI人材は「AIを活用する人材」と「AIを作る人材」の大きく2つに分かれます。今後ポイントになるのは前者を増やすことでしょう。
ChatGPTの登場以降、私はAIを活用するために必要なスキルを7つ定義しています(図参照)。まず大切なのは、AIを当たり前に使うマインド、そして基本や仕組みを理解することです。なぜここまで賢くなったのか、その構造を学ぶとともに、過去のAIについてはすべて忘れる、アンラーン(Unlearn)も重要になります。過去の仕組みにとらわれると、最新の技術を使いきれないからです。
そのほか、生成AIに指示したり質問したりする際の「プロンプト」(指令文)のスキルを上達させることや、AIを使った企画を立案する力を身につけることが必要になってきます。