米Microsoftの創始者ビル・ゲイツ氏が「人生で2度目、GUI(Graphical User Interface)以来の大きな衝撃」と称した「ChatGPT」をはじめとする生成AIに、今世界中が熱い視線を送っている。機能や能力の短期間での向上は目覚ましく、生成AIをベースにした多様なアプリやサービスがすでに続々と登場している状況だ。生成AIは多様なジャンルで活用可能と言われているが、ビジネスで重要度が高まっている顧客体験=UX(User eXperience)の設計にはどう活用できるのか。「アフターデジタル」という新たな概念を提唱して話題を呼んだ、UX設計を中心とするコンサルティングおよびSaaS提供会社​、ビービットの遠藤直紀代表取締役に話を聞いた。

「アフターデジタル」の時代、UXがますます重要に

――ビービットが提唱した「アフターデジタル」という概念はすでに広く浸透していますが、どのような意味かを改めて簡単にご説明いただけますか。

遠藤 直紀/ビービット 代表取締役

1974年鳥取県生まれ。横浜国立大学経営学部卒。米国留学後、ソフトウエア開発会社、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)を経て、2000年3月ビービット社を設立し代表取締役に就任。設立当時から日本では馴染みの薄い“ユーザビリティ、ユーザーエクスペリエンスの重要性”に着目し、コンサルティングを開始。人間心理を解明しデジタルサービスの改善を多数実践。2021年一般社団法人UXインテリジェンス協会の設立に参画し、代表理事に就任。
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好きな言葉:「never too late」(常に思い立ったが吉日であり、何事もすでに遅いということはないと思っています)
注目の人物:サム・アルトマン氏(米OpenAIのCEO。ChatGPTはもちろんですが、世界中の人々がグローバル経済にアクセスでき、恩恵を受けられるという「WorldCoin」もすごいと思います)、イーロン・マスク氏(米テスラのCEO。ある意味では今の生成AIの流れを作っているのも彼です。このあたりの方たちからは目が離せません)
お薦めの書籍:『Humankind 希望の歴史 人類が善き未来をつくるための18章』(ルトガー・ブレグマン著)

遠藤直紀氏(以下敬称略) 現代においては、スマートフォンが隅々まで普及し24時間365日肌身離さず所持しているのが当たり前になっています。この状況を、2019年に私たちは、企業が顧客とつながり続けられて顧客との関係性を24時間365日アップデートできる状況であると指摘し、デジタルが浸透した後という意味で、アフターデジタルと称しました。

 2023年現在では、DXといったビジネスの潮流も加わっています。多くの経営者が「アフターデジタル企業」に生まれ変わらなければと考え、実行するようになっています。

 アフターデジタルにおいては顧客から多様なデータを取得でき、取得したデータを使ってより良い価値を提供したり、より良いUXに活用したりできます。UXは、今後も1つの大きなテーマであり続けるのではないかと見ています。

デジタルが浸透した環境をアフターデジタルと呼称する
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――生成AIが急速に普及しています。UXの分野では、このテクノロジーにどう向き合えば良いのでしょうか。

遠藤 ChatGPTのような新しいテクノロジーを前にしたときに、まず大切なことは、そのインパクトがどれほどのものなのかを認識することです。ChatGPTにおいては、ビル・ゲイツ氏が「人生で2度目の大きな衝撃」と発言したほどです。また、当社社外取締役でIEEEフェロー、東京工業大学大学院連携教授の矢野和男氏からは「ニュートン力学に近い、科学的な発見」という声もあり、我々も本当にインパクトが大きいと感じています。