米Microsoftの創始者ビル・ゲイツ氏が「人生で2度目、GUI(Graphical User Interface)以来の大きな衝撃」と称した「ChatGPT」をはじめとする生成AIに、今世界中が熱い視線を送っている。機能や能力の短期間での向上は目覚ましく、生成AIをベースにした多様なアプリやサービスがすでに続々と登場している状況だ。生成AIは多様なジャンルで活用可能と言われているが、ビジネスで重要度が高まっている顧客体験=UX(User eXperience)の設計にはどう活用できるのか。「アフターデジタル」という新たな概念を提唱して話題を呼んだ、UX設計を中心とするコンサルティングおよびSaaS提供会社、ビービットの遠藤直紀代表取締役に話を聞いた。
「アフターデジタル」の時代、UXがますます重要に
――ビービットが提唱した「アフターデジタル」という概念はすでに広く浸透していますが、どのような意味かを改めて簡単にご説明いただけますか。
遠藤直紀氏(以下敬称略) 現代においては、スマートフォンが隅々まで普及し24時間365日肌身離さず所持しているのが当たり前になっています。この状況を、2019年に私たちは、企業が顧客とつながり続けられて顧客との関係性を24時間365日アップデートできる状況であると指摘し、デジタルが浸透した後という意味で、アフターデジタルと称しました。
2023年現在では、DXといったビジネスの潮流も加わっています。多くの経営者が「アフターデジタル企業」に生まれ変わらなければと考え、実行するようになっています。
アフターデジタルにおいては顧客から多様なデータを取得でき、取得したデータを使ってより良い価値を提供したり、より良いUXに活用したりできます。UXは、今後も1つの大きなテーマであり続けるのではないかと見ています。
――生成AIが急速に普及しています。UXの分野では、このテクノロジーにどう向き合えば良いのでしょうか。
遠藤 ChatGPTのような新しいテクノロジーを前にしたときに、まず大切なことは、そのインパクトがどれほどのものなのかを認識することです。ChatGPTにおいては、ビル・ゲイツ氏が「人生で2度目の大きな衝撃」と発言したほどです。また、当社社外取締役でIEEEフェロー、東京工業大学大学院連携教授の矢野和男氏からは「ニュートン力学に近い、科学的な発見」という声もあり、我々も本当にインパクトが大きいと感じています。