※本コンテンツは、2020年11月24日に開催されたJBpress主催「第7回 DXフォーラム」Day2の基調講演「アフターデジタル社会におけるビジネスの在り方」の内容を採録したものです。

株式会社ビービット
東アジア営業責任者
藤井保文氏

製品販売型から体験提供型への転換が競争力を左右する

 ビービットは20年にわたり、UX(顧客体験)向上をビジネス成果につなげるべく、UXデザインコンサルティングやUXデータサイクル定着支援を行っており、東京、台北、上海にオフィスがあります。私は現在、上海オフィスに勤務しているので、この講演では中国の事例も交えつつお話します。

 初めに『アフターデジタル』とはどんなものか、概要を説明します。日常生活にデジタルが浸透しつつある中、日用品の買い物や飲食店での注文など、オフラインで行われている行動も少なからずあります。こうしたオフライン行動も含めた全ての行動がデジタルデータ化して個人にひも付き、あらゆる行動データが収集できるようになる時代を『アフターデジタル』と言います。

『アフターデジタル』の社会ではビジネスはどう変わるのでしょうか。ポイントは、属性データしかなかった時代から行動データを活用する時代になるということです。

 年齢や性別などの属性データは大雑把なデータです。一般的に、人は仕事をしている時、家族と過ごしている時、スポーツをしている時など、その時々によって求めるものが違います。属性データでは日常の中での最適なタイミングといった機微まで分析することはできません。

 一方、行動データは最適なタイミングに最適なコンテンツの提供を可能にします。ただし行動データは、これまでのように製品を売っているだけでは収集できません。仮にカフェに毎日来る人がいたとしても、毎日夕方にカフェラテを買う、といった情報を得たところで、そのデータをもとに提供できるコンテンツには限界があります。

 行動データは、デジタルを活用し、ユーザーが置かれた状況に対してサービスやソリューションを提供することで収集できるようになります。例えば、きれいになりたい、賢くなりたい、といった困り事を解決しながら、顧客と高頻度に接するようなモデルが必要です。そうしたモデルか確立できると最適なタイミングでの価値提供が可能になっていきます。

 つまり、『アフターデジタル』の世界において、企業は製品を売ることをゴールとする製品販売型から、ずっと使い続けてもらえる・ずっと関係性を続けられる体験提供型に転換していけるかどうかが競争力を左右すると考えられます。