明治30(1897)年創業の100年企業「大阪ガス」を中核とする「Daigasグループ」が、デジタル化の次元を高めて「変化に強いDX」を実現するべく、大きな変革を進めている。
大阪ガスは、1985年の「Windows 1.0」登場の2年前に、将来的に情報関連ビジネスが重要になると判断し、後にオージス総研となる情報システム会社を設立した。非常に早い段階からデジタルの力で事業を高度化・効率化してきたわけだが、だからこその悩みもある。それはデジタルによる効率化が頭打ちになってきたことだ。
激変する事業環境の中でデジタル化の次元をさらに高め、ビジネスの新たな価値を創造するために、どのような変革に着手したのか。大阪ガス 執行役員 経営企画本部 DX企画部長の吉村和彦氏に聞いた。
効率化を進めていくと、縦はすごく強くなるが横揺れに弱くなる
――デジタル変革に早くから取り組んだ大阪ガスですが、今、新たに目指すDXとはどのようなものですか。
吉村和彦氏(以下敬称略) 大阪ガスが属するDaigasグループは現在、都市ガス製造、発電、海外天然ガス開発、不動産、炭素材といった10以上の事業領域を有しています。われわれはそうした事業領域でエネルギー会社として未来の価値をお客さまと共創し、社会課題の解決を通じて持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。
特に昨今は、社会環境や事業環境、さらには従業員やパートナーの多様性が大きく速く変化していますから、われわれのステークホルダーの視線も厳しい。そこにしっかり応えていきたいと考えています。
Daigasグループでは自社のビジネス変革を「Daigas Transformation」と称し、デジタル技術をさらに取り入れ、自分たちは変わるんだと強く発信しています。
大阪ガスは1950年後半からユニバックという当時の最先端コンピューターを活用して業務のシステム化や共通化を進めてきました。最近では話題になったRPA(Robotic Process Automation、パソコン操作の自動化)なども早い時期から取り入れました。
ただ、こうしたIT技術は、仕事の品質の安定化には大きく寄与するのですが、事業そのものの変化にはあまり貢献しないんです。もちろん、現場が一生懸命考えて取り入れた手法ではありますが、経営者の視点で見ると、その延長線上にわれわれが目指したい「変わり続ける会社があるのか」という疑問はぬぐえませんでした。
そこで、思い切って、人、物、金、そして経営者も新たに配分し直す勢いの大変革を目指す気運が生まれました。経営陣も私もそうですが、物事をつい自分たちの会社の物差しで考えてしまいます。だから、自分たちは変わっていると思っても、外から見たらイマイチだよねという現実が、やっぱりある。だからこそ、大きな変革が必要と考えました。