2024年に創業140年を迎える古河電気工業(以降、古河電工)は、1884年、足尾銅山から産出した粗銅の品質改善を目指した会社と、ゴム被膜電線の製造研究を行っていた会社の2つを祖としてスタートした。1897年、明治政府の電話事業拡張計画から高まった通信用電線の需要に対応したほか、1915年、初の国産海底通信用電線の製造に成功するなど、どんどん膨らむ社会のニーズに、技術を核としたイノベーションで対応、成長してきた。2020年4月には、DXの潮流に応える推進組織「デジタルイノベーションセンター」を設立。開発でも製造でも、常に技術革新を目指す古河電工のDXへの取り組みを聞いた。
技術による研究開発で行う「ものづくり」が核、それを毎日やり続けるのが古河電工
「デジタルイノベーションセンターという組織そのものは、2020年の4月に設立しました。古河電工は、ものづくりの会社ですので、以前から開発や製造作業において、データ活用や画像処理といった技術にいろいろ取り組んでいまして、2017年にはAIやIoTを専門とする課レベルの組織を作りました。それが大きくなり、デジタルイノベーションセンターという形になりました」と杉井氏は述べる。
2020年といえば、「DX=デジタルトランスフォーメーション」という言葉が、経済界等でかまびすしく語られ始めたころだ。「TransformationはXと言うんですね」といった会話が懐かしい。
DXで大事なのは変革だ。それはモノからコトへといったサービス志向に代表されるように、会社のありようを変えることともいわれている。
古河電工グループの強みは、メタル、ポリマー、フォトニクス、高周波という4つのコア技術であり、ビジネスモデルとしては開発できる力、提案できる力を多様な市場に提供することだが、同社もそうした動きを十分理解して「古河電工グループ ビジョン2030」と「中期経営計画2022~2025」では、社会課題解決型事業の創出を掲げている。
特に新しい素材の開発、製造技術の大幅な更新など、同社はものづくりをベースとした変革を常としており、杉井氏も「研究開発は常に当社の核であり、そこは決してぶれない」と述べる。ある意味、開発し変革するのが仕事のような会社とも言える。
野村氏も「メタル、ポリマー、フォトニクス、高周波を中心に開発する、関連する製品を作る個々の現場では、常に新しい素材を用意できないか、製造工程をもっと簡単にスムーズにできないかといった思いはあるわけです。多くの場合、弊社は10年以上前から技術を活用し個々の案件を解決してきました」と語る。
現状を変えることとは、古河電工にとっては新技術だったり、新素材だったり、革新的な製造工程を取り入れること。そして、こうした変革は、同社にとって日々の普通の営みというわけだ。
同社のこうした取り組みは、同社のYouTubeチャンネルでもテレビCMの動画として公開されている。同社社員がどんな変革に取り組み、達成を目指すかを紹介するもので「夢に挑め。アルミワイヤハーネス篇」では、車の軽量化に合わせて従来の銅線のアルミ化に挑戦している。
動画内では担当「村上」は使う人のうれしさを目指して「繰り返し地道かつ愚直な実証実験」を行い、他のスタッフの協力もあり、見事アルミ化を達成した。わずか2分の動画だが、同社の変革・革新へのこだわりを感じられる。