メルヘン 代表取締役社長の原田 純子氏(撮影:川口 紘)

 首都圏を中心にサンドイッチ専門店「サンドイッチハウス メルヘン」を展開する株式会社メルヘン。これまで販売したサンドイッチは300種類を超え、生クリームを使用したフレッシュなフルーツサンドには根強いファンも多い。

 1983年の創業以来、「営業部門は置かない」「拡大は目指さない」という経営スタイルを貫いてきた同社。それでも百貨店などの商業施設から出店依頼が絶えないという。その人気の秘訣はどこにあるのか。代表取締役の原田純子氏に聞くと、「のんきな経営」というキーワードが浮かび上がった。

営業活動はしなくても商品が“独り歩き”してくれる

――サンドイッチはシンプルな商材ゆえに、差別化がしにくいイメージがあります。その中で40年も経営を続けてこられたのは、どんな戦略があったのでしょうか。

原田 純子/メルヘン 代表取締役社長

1950年山梨県生まれ、池坊お茶の水学院卒業後、電機メーカー、食品会社を経て1982年サンドイッチハウスメルヘンを創業、翌年法人化、日本橋三越、髙島屋他、東京駅エキュートやグランスタ等28店舗を展開する。今年創立40周年を迎える。

原田純子氏(以下敬称略) 差別化というのは、実はこれまで意識したことがありません。本物志向の素材を使っておいしいサンドイッチをつくる。ひたすら、そのことだけを考え続けてきました。

 創業時から目指しているのは「日本人が食べておいしいと思えるサンドイッチ」です。例えば海外の食文化は、甘い、辛いと味覚がはっきりしているものが多く、日本人の味覚には重たく感じて途中で飽きてしまいます。そうではなく、食後に「また食べたい」と思えるようなやさしい味わい、例えるなら懐石料理のように余韻が残るイメージです。

 どんな具材にも合わせられるよう、リーン(素朴)な味わいで口どけのよいパンを独自に開発しました。具材もにんじん、れんこん、柴漬けなど日本人に好まれるものを多く使用しています。他社の動向はまったく気にせず、自分たちの商品を磨いていくことだけを心がけた結果、オリジナリティが出てきたのかなと振り返っています。


――現在、百貨店やJR東日本駅構内の「エキュート」を中心に28店舗を展開しています。店舗展開はどのように進めていったのでしょうか。

原田 まず、当社では創業以来、営業部門を置いたことはなく、営業活動を行ったこともありません。ありがたいことに、「メルヘンさんはおいしいよ」と、会ったこともない方が口コミで勧めてくれて、そこから出店依頼につながるケースが大半です。

 ある百貨店に出店する際、気になって「なぜ私たちに依頼してくださったのですか」と聞いてみたことがあります。すると、その百貨店の食品部長が娘さんから「おいしいサンドイッチがあるよ」と聞いて、実際に食べてみて、取り扱いを決めてくださったそうです。