P-DXの推進と2024年問題への対応

五味氏 これは、中期経営計画から抜粋した図です。われわれは「JP ビジョン2025」と呼んでいますが、その中で、「データドリブンによる郵便・物流事業改革」を目指し、P-DX、「ポスタル・デジタルトランスフォーメーション」として、さまざまな取り組みを展開しています。

 本日は、この中から「オペレーションの効率化」を取り上げ、オペレーション分野で、具体的にどのようなことにチャレンジしているのかということを中心にご紹介したいと思います。

 もう1つが、「2024年問題への対応」です。これは物流事業者各社が直面している課題です。われわれも、輸送モードの8割超はトラックで行っており、2024年問題への対応が非常に重要になってきます。

 さまざまな法令への対応や、働きやすい職場環境の整備としては、従前より、ロールボックスパレットを用いて運送するパレチゼーションを採用するなどしています。他社と共同運行、共同配送をしていくような取り組みや、また、自動運転化などの流れの中で先端技術を活用しながら、どのような取り組みができるのかということにもチャレンジしています。この後の事例の中で、このようなところも意識しながら、直近の取り組みをご紹介できればと思います。

 では、「ポスタル・デジタルトランスフォーメーションの取り組み」というテーマについては、動画をご用意していますので、ご覧ください。

(ムービー放映。ぜひ2ページ目の動画を再生しご覧ください。10分58秒頃に流れます)

 はい、ありがとうございました。この動画は、社内外で使えるようにと編集したものです。動画の内容についても、この後少し触れていければと思います。

先端技術を活用し、新しい物流ネットワークを構築する

五味氏 この図は、われわれを取り巻く環境変化です。

 郵便物が減少し、荷物が増えてきます。それに対してデジタル化を行います。一方で、人口減少や少子高齢化による労働力不足で、従来と同じ労働力の編成はなかなか難しいという問題にも直面していると思います。そのような状況に対し、AIや自動運転をはじめとしたさまざまな新技術を積極的に活用してオペレーションを進化させていき、持続可能で競争力のあるオペレーションを確立していきたいと、そのような趣旨で取り組みをまとめているものです。

 これは、動画の中にも出てきたそれぞれの取り組みを、業務プロセスに応じてプロットしているものです。

 図の左上にあるようなロボティクスの部分は、ターミナルでの業務です。中で仕分けをするソーティングセンターでの業務で、特に深夜帯の労働などが非常に多いので、これらをロボットに置き換えられないかということは、非常に力を入れて進めているところです。一方で、人的なものも含め一番リソースを割いているのは、図の右側のデリバリー、いわゆる集配業務です。この業務をどのような形で効率化し、生産性を上げていくのかというのが、重要な観点になってきます。

 バイクを用いる郵便配達に対し、荷物の配達についてはバイクにはあまり載らないので、軽四輪などを用いています。いわゆるルート配送をしているものと、それぞれ個別にルート組みをしているものがあるので、それぞれに応じた形で、テレマティクスと自動ルーティングなどの技術を取り入れていこうと考えています。また、ドローンや配送ロボットなども実装が進んできているので、集配業務の中で生かしていこうと思います。これが全体像です。

 これは、動画の中にも出てきましたが、ネットワークの構成です。今は、地域区分局というターミナルを軸にしてハブ&スポークのネットワークを組んでいます。これからのネットワークは、フィジカルインターネットなどともいわれ、差し出し位置から宛先までがデジタルデータでつながるような形になります。

 今までは、運送便の数をシステマチックに効率化していくために、ハブ&スポークというネットワークが考え出され、これを運用してきたわけです。しかし、荷物の情報が、差し出しのところから配達先までデジタルデータでつながってくる世界観になった場合には、AIを含め自動でルートを計算しながら、アドホックに、まさにインターネットのように最適な形でネットワークをつないでいく形態に変わってくると思います。この後、楽天さんとの取り組みも少しご紹介したいと思います。楽天さんとも、このようなネットワークの思想に基づいたさまざまな実証実験をしています。

 次に、テレマティクスについてです。やはり、日本郵便はバイクの配達員の数が非常に多く、今、全国を5万5000ぐらいの区に割り、全ご家庭、全事業所の宛先を、まさに一筆書きにするような形のネットワークで回っています。位置情報をもとにした区割りをしたり、日常管理の中で配達員とつながったりすることで、相互の応受援などを考えていきます。また、熱中症や大雪などがある中で、配達員が安全に業務運行ができているのかどうかについても、しっかり確認をしていこうと考えています。

 テレマティクスというのは、一般的にはトラック業界などで使われる用語かと思いますが、われわれはスマートフォン端末やGPS機能などを用いて、バイクの配達員の中でも、まさにこのテレマティクスの技術を用いて業務の高度化をしていく取り組みを進めています。このような形で、位置情報を集約し、データをそれぞれ取りながら、さまざまな分析に役立てています。

 一方、これはルーティングのシステムです。荷物の配達などをもとにしたもので、宛先があり、時間帯指定などもあるものなので、日々ルート組みをしています。

 今までは、どちらかというと熟練の社員の勘・コツ・経験のようなものに基づきルート組みをしていたのですが、スタートアップ企業とも連携しながら、ルーティングやナビゲーションなどを使って配達業務の難易度を大幅に下げていきます。誰でも、一定の配達のレベルが出せるルーティングのシステムを考えています。

 まさに今試行的にやっているものですが、この端末の写真を見ていただくと分かるように、今までは、一般的なハンディーターミナルのような専用端末でやっていました。これを、2024年の2月から、全国で14万台程度、全てスマートフォン端末に入れ替えます。アプリケーションの機能の中で、業務変化に対応できるような形にしていこうと考えています。それによって、スマートフォン端末をもとにしながら、誰でもルーティングのエンジンが使えるようになります。

 今、まさに競争環境が変わってきています。従来と違い、今までに宅配の経験がなくても、いわゆるフードデリバリーさんやアマゾンさんなど、ギグワーカーが宅配の業務に参入できるようになってきました。われわれも、業務の難易度を下げていきながら、当然、そのような労働市場にも対応していかなければいけません。そのような危機感もあり、さまざまなシステムを、まさに今進化させ続けている最中なのだと思っています。

 これが、オペレーションのイメージです。このような形で、差し出しデータを頂く時に事前に連携することで、いつ、どれぐらいの荷物が、どのような制約条件の中で届くのかが分かります。それをもとに、ルーティングのエンジンを回し、最適なルート組みをしていこうと考えています。