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日本郵便を取り巻く環境変化と郵便・物流事業の現在

五味儀裕氏(以下、五味氏) 皆さん、こんにちは。日本郵便の五味です。ただ今ご紹介にあずかりました通り、日本郵便でロジスティクス事業を担当しています。本日は、このような機会を頂き大変光栄です。よろしくお願いします。

 それでは、早速プレゼンテーションに入っていきます。まずは、私の経歴です。日本郵便に入社し、経営企画やオペレーションに携わり、今はロジスティクス事業部で物流関係の営業に従事しています。

 本日は、「日本郵便を取り巻く環境変化と2024年問題」という観点で、会社を取り巻く環境について少しご紹介します。その後に、本日のテーマでもある、われわれが内部で「ポスタル・デジタルトランスフォーメーション」と呼んでいる、独自のデジタルトランスフォーメーションの取り組みについてご紹介します。最後に、楽天さん、佐川さんとの協業、連携の取り組みについてもご紹介したいと思います。

 このグラフは、今の会社の郵便・物流事業の推移について、過去10年ほどの経過をまとめたものです。ご案内のとおり、2001年をピークとして、今、郵便物は減少に転じています。2021年までのこの20年間、郵便は4割程度減ってきました。長期の減少のトレンドに入っているということです。その一方で、eコマースの需要が非常に伸びていることもあり、われわれ全体としては、郵便から物流へ、事業そのものを大きくシフトしていくさなかにあると考えています。

 郵便の需要を見てみると、20年間で4割程度、年間2%ずつの減少です。年間2%の減少というのは、諸外国に比べ少し緩やかだといわれています。その原因は、主に官公庁などの行政手続きにおいてデジタル化が遅れ、紙の需要が非常に強かったということです。また、民間のビジネス慣行も、請求書や契約書などが、紙・はんこなどに支えられ、それが郵便物の需要を下支えするという構造もあったとみています。

 ただ、昨今のコロナ禍に伴い行政プロセスがデジタル化し、民間セクターにおいてもテレワークを中心とした働き方に変わっていきました。「脱はんこ」という言葉もありましたが、事務プロセスそのものにおいてデジタル化がかなり進んでくる中で、これからは諸外国と同様、郵便の減少にさらに拍車がかかっていくのではないかとみています。そのような意味では、われわれの事業構造の転換も、それに応じた形でより加速させていかなければならないのではないかと感じています。

 右側のグラフは、利益の水準を示したものです。これは当然、同じ郵便局舎、配達ネットワークを使っているので、一定の案分を用いてということになりますが、われわれは郵便と荷物で業務の種類別の収支も公表しています。実は、以前は郵便の利益が非常に出ていたのですが、直近では荷物で利益を出す構造になっています。これは計算上の話ですが、郵便はなかなか利益が出ないという構造になっています。

 グラフ下の表にあるように、収益・売り上げ規模でも、約10年前には荷物の割合は23%程度であり、郵便と荷物の比率は3対1だったものが、直近では34%、郵便との比率は2対1になってきています。利益については、今、9割以上が荷物の利益です。この事業構図の転換に対して、大きくチャレンジをしながらさらにそれを加速させていく取り組みがより一層必要だと考えています。

 これは公表資料ですが、今競争が激しいといわれている宅配市場の、他社との比較です。それぞれ、今、社名は伏せていますが、青の会社と黄色の会社との競争ということになるわけです。

 全体として、われわれが直近、減収減益傾向であるのに対して、青の会社については増収増益、黄色の会社については増収ですが、利益は若干鈍化しているという傾向です。

 一方で、この利益の水準について見ていただきたいのは、直近の2021年度は少しおじぎをする形で、全体ではわれわれも苦戦をしていますが、その前の3年程度を見ると、実は、荷物でもわれわれがしっかりと利益を上げていたということです。

 当然、決算で上下したり、昨今のいろいろな動きもあるので、当面は少し苦戦をすることも見込まれます。荷物や物流という分野では、われわれはまだまだ弱い部分がありますが、一方で、利益水準などの部分で一定のプレゼンスを発揮しながら、物流事業者、物流で闘う会社として認知いただくことも1つの大きな課題だと感じています。

 これは、過去20年ほどの宅配便の取扱物数の推移です。先ほどお伝えしたように、2001年をピークに、点線で示した郵便物数は徐々に減少を続け、荷物でそれを補うという構造です。

 大口の事業者の取り合いのような部分もあり、直近では、荷物の取り扱いについても、われわれがなかなか苦戦していることが見ていただけると思います。これをもう一度底上げし、荷物の取り扱いもしっかりと増やしていくことが、非常に重要なテーマです。

 ここで少し着目していただきたいのは、左と右の目盛りです。右の郵便の取扱数の目盛りは、左の荷物の目盛りに対して桁が1桁多くなっています。宅配便そのものは、各社の個数を合わせても、ここに表れないものも含めて50億個ぐらいといわれています。郵便は、減っているとはいえ、1社で150億通取り扱っています。逆に、このような郵便の強みも生かし、どのような形で取り組んでいくのかということも、大きなテーマだと考えています。

 例えば、そのような取り扱いの中で、派生的に得られるデータがあります。1番ありていにお伝えすれば、今、約10万人が郵便も荷物も含めた配達に従事しており、われわれは住所録など、ある意味で街の新鮮な情報というものを、日々の配達活動の中から取ることができます。荷物の10倍の密度でこのようなトランザクションがあり、例えば防災分野も含めた公的な分野で、そのような情報を活用できるかもしれません。

 個人情報の取り扱いなどいろいろなものに留意しなければいけませんが、現住の方がどこにいらっしゃるのかという情報や、今問題になっている空き家について、どのようにして空き家になったかという直近の鮮度の高い情報。また、これからのデジタル基盤として、地域の空間情報。これは、この後ご紹介するドローンや自動運転などにおいて、地図基盤の実装が非常に重要なテーマになります。それらを、まさに日々の配達活動の中から取り、付加価値に変えていくような取り組みも、これから重要になってくると考えています。

 いずれにしても、郵便と荷物の取り扱いを巡る大きなトレンドとして、やはり、これからも取扱物数そのものがこのような曲線を描いていくことは避けられないと思います。これに対応し、われわれがデジタルの力も用いながら、どのように事業変革にチャレンジをしていくのかについて、この後少しご紹介できればと思います。