SGホールディングス、C&Fホールディングス、公開買い付けについての会見。左から綾宏将C&FロジHD社長、松本秀一SGHD社長、木村正秀佐川急便社長(2024年5月31日)
写真提供:日刊工業新聞/共同通信イメージズ

 2023年、経済産業省が「企業買収における行動指針」を策定。上場企業に対する「同意なきTOB(敵対的買収)」のルール整備が進み、東京証券取引所による資本コストや株価に対する意識向上の要請、機関投資家の厳格な視線が経営者に株主価値の向上を迫る。その結果、取締役会の賛同が不要な「同意なきTOB」が増加、企業の支配権が市場で争われる可能性が高まっている。

 本稿では、企業買収やアクティビスト対応の助言を手掛けるQuestHub(クエストハブ)の大熊将八氏が、AZ-COM丸和ホールディングス(HD)によるC&FロジHDのTOB事例を分析。「企業支配権市場」の現実、「同意なきTOB」への向き合い方を徹底解説する。

「同意なきTOB」で企業買収の潮目が変わった

 2023年、経済産業省が「企業買収における行動指針」を策定し、上場企業に対する同意なき(敵対的)買収のルール整備が行われたことにより、その増加が見込まれる。アクティビストファンドも、経営陣の解任やそれをきっかけとした非公開化を促す主体として存在感を増している。

 東京証券取引所は上場企業に対して資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応を要請し、一般機関投資家や議決権行使助言会社は企業の安定株主として機能する政策保有株式に対して厳しい目を向けている。

 こうした環境の変化により、日本でも株主価値を高められない上場企業経営者は解任されるか企業自体が買収されるという「企業支配権市場」が立ち上がりつつある。その「企業支配権市場」における究極的なシチュエーションが対象会社の取締役会の同意を得ない状態でのTOB実施、つまり「同意なきTOB」だ。

 通常の買収提案やTOBは、基本的には対象会社の取締役会の賛同意見を実施条件とする。そのため、買収者は取締役会(経営陣)からの同意を得るために説明や交渉などさまざまな融和策を取る。

 しかし、買収者にとっての賛同意見の獲得が「必須条件」ではなく「努力目標」になると状況は一変する。