セブン-イレブンがコンビニトップの座を維持している理由

 出店だけではない。大手流通業者なら必ず物流拠点を持っている。問屋やメーカーからの商品はいったん物流拠点に納品され、そこから各店舗へ配送される。ダイエーはこの物流拠点を自前でつくった。そして仕入れ業者から物流施設の利用料を徴収した。中内氏に言わせれば、各店舗に直接配送するよりはるかに効率がいいのだから、その対価をもらうのは当然、ということになるが、仕入れ先からの評判は悪かった。

 セブン&アイにももちろん物流拠点はある。ただし自前ではつくらず、問屋やメーカー、そして物流業者につくらせ、それを利用した。伊藤氏にすれば、自分たちは物流会社ではないためノウハウもない。だったら他社を信頼しアウトソーシングしたほうが効率がよく、しかも仕入れ業者や物流業者が主体的に動いてくれると考えた。

 商品戦略でも同様だ。中内氏率いるダイエーは、かつて松下電器(現パナソニックホールディングス)と全面対決したことがある。昔の家電製品はメーカーが定価を設定、小売店は自らの裁量で値下げをすることができなかった。しかし中内氏は「価格決定権は消費者にある」と値下げ販売を断行したのだ。

 その結果、松下電器から取引を停止される。これに対抗して中内氏は、家電メーカーのクラウンを買収、自ら家電製造に乗り出した。結果的にクラウンは大赤字を出すのだが、「売らぬなら作ってみせよう」というのは、いかにも中内氏らしいエピソードだ。

 だが、セブン&アイはまるで違う。収益の柱は、言うまでもなくコンビニエンスストアのセブン-イレブンだ。このセブンが、ローソン、ファミリーマートより収益力に勝るのは、ひとえにプライベートブランド(PB)戦略に秀でているためだ。ここでもセブン&アイは徹底的に外部の力を利用する。

 商品企画や商品チェックに関して、セブン-イレブンが徹底的に関与するが、製造するのはあくまで第三者。メーカーにとってみればセブン-イレブンは口うるさい存在だが、協力すればヒット商品が生まれる確率が高いことをメーカー側も知っている。この信頼関係があるからこそ、セブン-イレブンはコンビニの頂点に輝き続けている。