「無印良品」を展開する良品計画はプロ人材の採用を積極的に進めている。「第二創業」を掲げ、2030年に売上高3兆円を目指す堂前宣夫社長の成長戦略の一環だ。同社の執行役員で基幹システムなどを担当するITサービス部の久保田竜弥氏もその一人。久保田氏に同社の今後のシステム整備の方向性について聞いた。
良品計画をテックカンパニーにする
――元はファッション通販サイト「ゾゾタウン」を運営するZOZOで子会社の社長を務めていた。なぜ良品計画に入社したのですか。
久保田 ZOZOでやり切った感があって、45歳を目前にしてこの先20年どうしようかと。地元が津波の被害を受けた岩手県宮古市で、これまでの経験を生かして地元や地方の人の役に立ちたい、社会貢献したいと考えました。転職エージェントに相談したら10人中8、9人から「それなら良品計画」と言われ、自分の価値観に近いなと感じて、入社を決めました。
――良品計画のDX(デジタル変革)関連部門は2つに分かれているとか。
久保田 お客さまに触れるフロント側をEC・デジタルサービス部が、バック側を私がいるITサービス部が担当しています。要は基幹システムで、サプライチェーンをはじめ、顧客、EC(電子商取引)領域のバックエンドの開発、店舗のシステム、全社の情報システム系の社内システムです。現在の人員は50人強です。EC・デジタルサービス部の執行役員も実はZOZO出身の宮澤高浩が担当しています。
――久保田さんのミッションは。
久保田 私は入社時から「良品計画をテックカンパニーにする」と言っています。世の中の課題や違和感を技術の力を使って解決していく集団を目指します。
当社は製造小売業なので、商品を開発・生産し、物流で届け、店舗で販売するという一連の業務の流れがありますが、それぞれが縦割り組織になってしまって、一気通貫で見る人が不足しています。だから組織と組織の間にボールが落ちてしまうという「消極的セクショナリズム」が起きてしまっています。そのセクショナリズムの隙間を埋めて、技術の力を使ってつなげていきたいと考えています。
レガシー化したシステムを全部作り直す
――入社して良品計画のシステム上の課題は何だと感じましたか。
久保田 思った以上に外部ベンダーへの依存度が大きいと感じました。作るところだけならいいのですが、考えるところもまるっと依存している感じです。
システムの世界ではこのボタンを押したら商品をカートに入れるといった実装したい機能である機能要件とそれ以外のセキュリティやパフォーマンス、メンテナンスのしやすさといった非機能要件がある。
システム開発で一番大事なのは実は非機能要件の部分を握ることなのです。そこを握れていないので、表面上は動いているように見えても、裏側の部分でベンダーA社とB社で全然考え方が違うつくりをして、その連携がうまくいかず障害が起きたり、サービスレベルが違ったりする。ちぐはぐなシステムだという印象でした。
――それを今後どう変えていく。
久保田 レガシー化した今のシステムを全部作り直す、リプレースしていきます。サプライチェーンのシステムはプロジェクト化され、ECの基盤もこれから手掛けます。物流や店舗のシステムも業務プロセス的に裏で全部つながっているので、順次リプレースをしていきます。
そのためには内製できるメンバーが必要になるので、採用も強化しています。内製化と言っても考えるところから作るところまで全部を内製化しようというのではなく、最初の部分の要件定義や考える部分をしっかり握る。それをやれる経験豊富なリーダー層のメンバーを中心に、私が入社した4月から10月までに10人ほど採用しました。今も月4、5人ペースで採用しており、23年8月までに100人体制にする目標です。