イオン ICT企画チーム・デジタルアカデミー責任者の沖中優宜氏(撮影:冨田望)

 イオングループで現場の従業員を起点とした「ボトムアップDX」が広がりを見せている。グループ各社の希望者1000人に生成AIを自由に使ってもらい、活用法を探索。社員自らが講師を務める生成AI勉強会も定期的に開催している。トップダウンによる全社的なDX推進に加え、なぜボトムアップのアプローチが必要だったのか。イオンデジタルアカデミーの推進役を担うイオンICT企画チーム・デジタルアカデミー責任者の沖中優宜氏に聞いた。

DXの「自分事化」を促す「イオンデジタルアカデミー」

──イオングループは現場起点のDXに取り組んでいます。なぜ「ボトムアップのDX」を重視するのでしょうか。

沖中優宜氏(以下、敬称略) 当社ではこれまで、アプリの開発や分析基盤の整備など、トップダウンでのDXを進めてきました。しかし、各現場の抱える課題は多様化しており、一律的なトップダウンだけでは対応し切れない状況になっています。

 私自身、本社に来るまでは、現場のスーパー店舗でキャリアを積んできました。私が入社した2007年当時は、まだ地域の人口も維持されていて、本部が決めた計画を実行していれば売り上げはついてきました。

 しかし、2010年を過ぎると状況は一変し、どの店舗でも人口減少が目に見えて進みました。本部主導の画一的な施策やMD(マーチャンダイジング)を実行するだけでは、もはや売上を確保できない。それぞれの現場が、目の前のお客さまに向き合い、自らMDや業務効率化を考えなければ生き残れない──そんな危機感を、私も現場にいながら肌で感じていました。