国内企業のDXの最新動向を紹介するこの連載では、これまで製造業・建設業の企業を取り上げてきたが、今回から金融業を取り上げたい。金融業界のDXでは各社がさまざまな展開を見せているが、まずは金融業界全体の動向を見てみたい。
今回は、金融業のDXで重要なBaaS戦略、銀行の顧客接点戦略、ブロックチェーン技術の活用、DX人材戦略について紹介したい。
【BaaSが変える銀行の役割】 裏方で“銀行機能”を提供
金融DXでは,新たなタイプの金融サービスが注目されている。API(アプリケーションプログラミングインターフェイス)を提供して金融サービスの機能を提供する“埋込型金融(Embedded Finance)”が拡大している。特に、銀行がBaaS(Banking as a Service)機能を持つことで、ネオバンク(銀行免許を持つ企業と提携して、自社独自の金融サービスを提供する企業)へ銀行機能を提供する事例が増えている。
BaaSは、銀行機能をAPIで提供するサービスのことであり、プラットフォーム展開することで利用者増や収益拡大を期待できる。ネオバンク側としても、新規に銀行のサービスを提供しようとする際に銀行機能を自社開発する必要はなく、BaaSのAPIを利用して事業を開始できるメリットがある。
例えば、住信SBIネット銀行は、流通・サービス企業の利用者が日々接するサービスの中に銀行サービスを取り入れるようなネオバング開設を想定して、BaaS機能を提供している。既に、日本航空やヤマダデンキなどが利用している。日本航空の「JAL NEOBANK」では、マイルの付与と関連付けるなど航空会社ならではのサービスを提供している。「ヤマダNEOBANK」では、特有な住宅ローン(家電・家具購入費を合算できる)を提供している。なお、住信SBIネット銀行は髙島屋ともネオバンク設立の検討を開始していて、百貨店の顧客(友の会など)への独自な金融サービスなどが検討されている。
このように、BaaSを利用することで、流通・サービス企業が自社顧客向けへの独自の金融サービスの提供が可能となり、顧客サービスの充実や囲い込み強化を狙うことができる。
なお、GMOあおぞらネット銀行、みんなの銀行(ふくおかフィナンシャルグループ)、新生銀行も、BaaSサービスを提供している。